投資のリスクは「悪いもの」ではない!リスクの種類と適切に向き合う方法を解説

 

この記事の目次

「投資にはリスクがある」

投資を始めるとよく見聞きする言葉です。

リスクには「危険性」という意味があるため、「リスクの高い投資は危険」と思っている方もいるでしょう。

しかし投資の世界におけるリスクとは、単に危険性を表す言葉ではありません。

投資のリスクとは、投資対象の値動きの幅を指します。

10万円で購入した株が20万円に上がるかもしれないし、5万円に下がるかもしれない*。

このような投資対象の価値(株価)が変動する可能性が、投資におけるリスクです。

リスクは排除するものではなく、正しく理解して向き合うことが大切です。

この記事でリスクとは何か、リスクの種類を理解し、投資の判断に役立ててください。

*上記の値動きは一例であり、株式投資全般のリスクを表すものではありません。

1.投資におけるリスクとは、値動きの変動幅を指す

一般的に「リスク」という言葉は、危険性といった意味合いで使われています。

「その判断にはリスクがある」など、将来の危険性を揶揄する場面で使われることが多いのではないでしょうか。

一方で投資の世界の「リスクがある」は、投資した資産の値動きの幅を意味しています。

投資は危険と言っているわけではありません。

ここでは一般的なリスクと投資のリスクの違い、リスクとリターンの関係を見ていきましょう。

1-1.一般的なリスクと投資リスクの違い

「一般的なリスク」と「投資のリスク」の違いは、以下のとおりです。

  • 一般的なリスク:将来の危険性を意味する。将来のいずれかの時点で、おもに悪い事象が起きる可能性を指す
  • 投資の世界のリスク:予想どおりのリターンにならない可能性を意味する。投資対象の資産価値の振れ幅、値動きの幅を指す

一般的なリスクはおもに悪い事象が起こる可能性を指していますが、投資のリスクは悪い事象を指しているわけではありません。投資対象によって資産価値が+5%になるかもしれないし、-5%になるかもしれないという、値動きの幅を指しているのです。

つまり投資の世界で「リスクが大きい投資」とは、値動きが激しい投資を意味します。

「株式投資はリスクがある」と言われるのは、秒単位で株価が変動し、時には大きく揺れ動く可能性があるからです。

経済や政治、企業の業績によって一気に株価が上昇することもあれば、一気に下降することもありますよね。資産価値の揺れ動く幅が大きいから、リスクが大きいと言われるのです。

1-2.リスクとリターンの関係

投資のリスクとリターンは、密接に関係しています。

リスクが低ければリターンも低く、リターンが高ければリターンも高くなる可能性があるのです。

リスクが高いとは、すなわち値動きが激しいということです。

値動きが激しければリターン(収益)の幅も大きくなるため、リターンの期待値も上がります。

このようにリスクとリターンは密接に関係しているため、例外はありません。

ローリスク・ローリターンの投資はあっても、ローリスク・ハイリターンの投資はないのです。

投資でハイリターンを目指せば、当然ハイリスクになることは理解しておきましょう。

2.リスクは確率によってある程度予測できる

リスクとは、おもに統計データからある程度「これぐらい値動きがあるだろう」と予測できるものを指します。

2020年に世界中を席巻した新型コロナウィルスの存在は、まったく予測できないものでした。

一方で過去100年超の株式市場の歴史から、ある程度「株式はこれくらいの幅で動く」といった値動きの予測は立てられます。

株式の値動きのように、過去の確率・統計によってある程度予測できるものが投資のリスクです。

前者の感染症は予測不可能の事態ですので、事前に対策を講じることはできませんでした。

しかし株式投資の値動き=投資のリスクは、過去の市場からある程度予測できます。

だからこそ、リスクはある程度コントロール可能です。

投資の世界では、金融商品によってさまざまなリスクが存在します。

あらかじめどのようなリスクがあるのかを知っておけば、事前に対策を講じて、資産が目減りする可能性を極力抑えられるでしょう。

リスクをゼロにすることはできません。

大切なのは、投資の方法ごとにリスクがあるのかを把握したうえで、適切なリスク対策を取ることです。

リスクを過度に怖がらず、きちんと理解したうえでうまく付き合っていきましょう。

3.投資リスクの種類を解説

ここではおもな投資リスクの種類を解説していきます。

リスクの種類とは、投資対象の資産価値が変動する原因です。

株式に投資するのか、外貨に投資するのか。投資対象によって資産価値が動く原因はそれぞれ異なります。

「自分が投資したい金融商品・サービスにはどのようなリスクがあるのか」を理解したうえで、リスクと適切に向き合いましょう。

3-1.市場リスク

市場リスク(マーケットリスク)は、株式市場や債券市場で投資する際に生じるリスクです。

株価や債券の価格が変動する価格変動リスクのほか、金利リスクや為替リスクも市場リスクの一部に含まれると言われています。

例えば株式市場でA社という企業の株に投資したとします。

その後、A社は順調に業績を伸ばし、株価も上昇。しかし株式市場全体の相場が下がり、あわせてA社の株価も下がってしまいました。

このように企業の業績に関わらず、市場全体の相場に影響されて株価が変動してしまうのが市場リスクです。

市場リスクに対処する方法の基本は、分散投資です。

値動きの異なる市場の金融商品・サービスに投資し、リスクを分散するようにしましょう。

3-2.金利リスク

金利リスクとは、債券市場での投資によって債券価格が変動するリスクです。

投資のセオリーとして、債券市場で金利が上昇すれば、保有している債券の取引価格は下落します。

債券市場で購入し、長期保有していたA債券の価格が、市場全体の金利上昇に影響されて下落してしまう、とイメージするとわかりやすいでしょう。

このように発行母体の動向に関わらず取引価格が変動してしまう点は、先述の市場リスクと同じですよね。

よって金利リスクは、市場リスクの一つとも言われています。

市場リスクと同様、金利リスクに対処する方法は分散投資です。

金利動向に左右されない全く別の市場で投資対象を見つけ、リスクを分散させましょう。

3-3.為替リスク

為替リスクとは、外貨建て資産への投資によって資産の価格が変動するリスクです。

外貨預金や外貨建てMMF、外国株式、外国債券、外貨建て生命保険などが外貨建て資産に該当します。

例えば日本で米ドルの外貨預金を持つには、円から米ドルへ交換する必要がありますよね。

交換の際に「100円=1米ドル」といった通貨の交換比率を表すのが、為替相場です。

為替相場は固定ではなく、銀行の営業日にあわせて日々更新されています。

当初100円で手に入れた1米ドルの価値が、交換後に105円に上がることもあれば、90円に下がることもありえます。

相場の状況によっては資産価値が下がり、為替差損を被る可能性があるので覚えておきましょう。

為替相場は各国の経済情勢など、さまざまな要素で変わります。プロですら為替を完璧に先読みすることはできません。

交換のタイミングを複数回に分けて変動に対処する方法もありますが、通貨交換の為替手数料が重なり利益を蝕む可能性も出てきます。

為替リスクに対処するためには、為替リスクにさらされない日本円の資産など、異なる市場の投資対象を持つことが大切です。

3-4.インフレリスク

インフレリスクとは、物価上昇時に実質的な資産価値が目減りしてしまうリスクを指します。

例えば2021年2月現在、銀行の普通預金の平均年利率は0.001%。

銀行に預金を100万円預けていても、10円程度の利息しか付きません。

このまま預金の金利が変わらなければ、10年経っても利息は100円程度(税別)。

しかし今後物価が上昇すれば、10年前には400円だった喫茶店のコーヒーが、500円になるかもしれません。5個パック300円のティッシュペーパーが、5個パック400円になるかもしれません。

このように身の回りの物価が上がると、相対的に保有している100万円の価値は下がってしまいます。

100万円の価値はたいして変わっていないのに、物の価値だけが上がっているからです。

このように物価の上昇によって、保有している資産の価値が実質的に下がってしまうのがインフレリスクです。

現在日本銀行は2%の物価上昇を目標に掲げ、マイナス金利政策を継続しています。

インフレリスクに対処するためには資産を預貯金だけで保有せず、さまざまな投資対象に分散させることが大切です。

普通預金の平均年利率の出典:「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」(日本銀行ホームページ)

https://www.boj.or.jp/statistics/dl/depo/tento/index.htm/

3-5.信用リスク

信用リスク(デフォルトリスク)とは、おもに債券投資の際に生じるリスクです。

債券を発行している企業や自治体、国といった発行元の財務状況の悪化などにより、投資した資金が回収できない可能性を指します。

債券の場合は発行体からの金利支払いが遅くなったり、一定期間停止されたり。最悪、投資元本が返還されない可能性もあります。

他の投資と比べて安全性が高いと言われる債券投資でも、絶対に投資元本を回収できるとは限らないのです。

信用リスクは債券投資の他、貸付を事業の主体としているソーシャルレンディング投資でも可能性があります。

これらの投資には元本保証がありません。

できる限り集中投資は避け、複数の発行体・ファンドに分散投資し、万一デフォルトが起きてもトータルで利益になる投資を心がけましょう。

3-6.カントリーリスク

カントリーリスクとは、投資対象国(有価証券等の発行国)の経済情勢や社会環境の急激な変動より、資産価値が大きく変動するリスクです。

投資対象の事業やサービスの業績が好調であっても、国全体の状況が悪化すれば、その国の株式や債券の資産価値も大きく下落する可能性があることを指します。

数あるリスクの中でも突発的に起こり、マイナスの影響が大きいのがカントリーリスクです。

国内の紛争や内乱、テロの発生、大地震などの自然災害。

そうした予期せぬ事態によって引き起こされるため、個人があらかじめリスクを予測することはできません。

カントリーリスクへの対策は、一つの国に集中投資しないことが基本です。

特に国内の情勢が不安定な新興国への一国集中投資は避け、複数の国の資産を分散して持つようにしましょう。

4.まとめ

投資のリスクは、投資対象の値動きの振れ幅を指しています。

リスクが高い投資は値動きが激しいぶん、得られるリターン(収益)も大きくなるため、リターンを得るにはリスクが必要不可欠です。

つまりリスクは排除するものではなく、賢く向き合うものです。

リスク対策の基本は、分散投資。

資産をできる限り分散させたうえで、ご自身にあった金融商品・サービスで資産形成をしてください。


前へ

不動産投資の始め方について解説

次へ

相続放棄とは何か?相続放棄をすべきケースや手続について解説