レバレッジファンドは長期投資に不向き?仕組みやメリット・デメリットを解説
この記事の目次
レバレッジファンドとは、日経平均やTOPIXといった指標(インデックス)の2~3倍程度の値動きをするように設計された投資信託。
リスクをとってハイリターンを狙えるインデックスファンドとして、投資の世界で注目を集めています。
リスクが高いインデックスファンドと聞くと「長期投資によってリスクを抑えられるのでは」と思うかもしれません。
しかし投資信託への投資歴が長い筆者は、レバレッジファンドは長期投資に不向きと感じています。
この記事では、
・なぜ長期投資に向かないのか
・アクティブファンドや一般のインデックスファンドとは何が違うのか
をふまえて、レバレッジファンドの仕組みやメリット・デメリットを解説します。
「レバレッジファンドが気になるけどリスクも気になる」という人は、投資判断の参考にしてみてください。
投資信託でもレバレッジをかけられる!レバレッジファンドの仕組み
レバレッジファンドは、元になるベンチマーク=日経平均やS&Pといった指数の一定倍数の値動きを目指す投資信託です。
投資信託協会の投資区分によると、レバレッジファンドはインデックスファンドの特殊型と位置づけられています。
<投資信託の分類>
・インデックスファンド:特定の指数(インデックス)をベンチマークとし、ベンチマークに連動した値動きを目指す
レバレッジファンド:ベンチマークとなる指数の1日の動きに一定倍数をかけた(2~3倍程度)値動きを目指す。「レバレッジ型」「ブル型」と呼ばれることもある※
・アクティブファンド:ファンドマネージャーが銘柄選定・運用し、ベンチマーク以上の値動きを目指す
※一定倍数の値動きを約束するものではなく、あくまで運用方針
レバレッジ=てこの力を働かせるように、少ない資金で大きな値動きを期待できるのがレバレッジファンドの特徴です。
たとえば日経平均をベンチマークとするレバレッジファンドがあるとします。
この場合のレバレッジが2倍であると、日経平均が1日に5%上昇すれば、レバレッジファンドの基準価額は10%程度上昇します。
逆に日経平均が1日5%下落すれば、レバレッジファンドの基準価額は10%程度下落するのです。
インデックスファンドがベンチマークと同じ値動きを目指すのに対し、レバレッジファンドはベンチマークの一日の動きに一定倍数をかけ、機械的に大きな値動きを目指しています。
つまり通常のインデックスファンドに比べて、利益も損失の額も大きくなりやすいのがレバレッジファンドです。
レバレッジファンドのメリット・デメリット
レバレッジファンドのメリット・デメリットを一言で言うと「インデックスファンドに比べてハイリスク・ハイリターン」であることです。
インデックスファンドに比べてリターンもリスクも高い点は、アクティブファンドも同じです。
ではレバレッジファンドは、アクティブファンドと何が違うのでしょうか?
それぞれ比較しながらメリット・デメリットを見ていきましょう。
インデックスやアクティブと比較したメリット
レバレッジファンドには以下3つのメリットがあります。
・少額で大きなリターンを得られる可能性がある
・短い期間でも利益につながる可能性がある
・ベンチマークの相場が上昇傾向にあるときは有利
少額かつ短期間で大きな利益を手にできるメリットは、高い利益を目指すアクティブファンドも同様です。
そのため「投資信託でリスクを取るのなら、アクティブファンドでもいいのでは?」と思うかもしれません。
しかしアクティブファンドはファンドごとに独自の運用方針が設定されているため、ファンドが違えば内容もがらりと変わります。
その点レバレッジファンドはインデックスファンドの派生形。運用方針は「ベンチマークの値動きに一定倍数をかけたパフォーマンスを目指す」とシンプルです。
またアクティブファンドは銘柄調査などの費用がかかるため信託報酬が高くなる傾向があるものの、レバレッジファンドはアクティブほどの信託報酬がかかりません。
したがってレバレッジファンドのメリットをまとめると
「インデックスファンドより短期で高い収益を目指せる可能性があるが、アクティブファンドほどコストは高くない。運用方針もシンプルでわかりやすい」と言えます。
アクティブとインデックス、どちらがより優れているという話ではありません。
レバレッジファンドはインデックスの派生タイプとして、アクティブファンドより仕組みを理解しやすく、コストも抑えられる点がメリットになりうる、ということです。
デメリット:インデックスやアクティブと比較したデメリット
一方、レバレッジファンドには以下4つのデメリットがあります。
・相場が下降傾向にあるときにもレバレッジがかかるため、短期間で大きな損失を被る可能性がある
・相場が横ばいで大きな変動がないときは不利になる
・運用期間が長くなると、ベンチマークと実際のパフォーマンスに乖離が出る可能性がある
・つみたてNISAで投資できない(一般NISAなら可)
相場が上昇傾向にあるときに強いレバレッジファンドですが、相場に大きな変動がないときや下落相場のときは弱いという特徴があります。
下がるときにもレバレッジがかかってしまうため、特に大きな下落後は基準価額が回復しづらくなるでしょう。
このようにレバレッジファンドのメリット・デメリットは、すべてベンチマークとなる指数や相場の動きによって左右されます。この点をどう感じるかで、レバレッジファンドに対する評価は変わってくるのではないでしょうか。
レバレッジファンドはインデックスファンドのリスクを大きくし、高い収益性を期待するものです。
一方でアクティブファンドはそれぞれ独自の運用方針が設定されているため、必ずしもベンチマークの動きでパフォーマンスが左右されるわけではありません。
ヘッジファンド型投資信託のように、相場の変動にかかわらず高い収益性を求めるファンドもあります。
「市場や相場がどうであれ、絶対的な収益を期待したい」と思うのであれば、そもそもインデックスファンドやレバレッジファンドは不向きです。
投資信託に収益性の高さを求めているのであれば、自身の目的にあったアクティブファンドを投資することも考えましょう。
インデックスにレバレッジをかけるのは長期投資には不向き
レバレッジファンドの仕組みの基本はインデックスファンドであり、市場の動きにあわせて基準価額が変動するとお伝えしてきました。
レバレッジファンドの場合、基準価額の変動幅に一定倍数のレバレッジがかけられるため、通常のインデックスファンドよりリスクは高くなります。
とはいえ、市場の値動き・成長にあわせてリターンを期待できるため、「レバレッジファンドも長期投資すればリスクを抑えられるのでは」と思うかもしれません。
しかし筆者は、レバレッジファンドは長期投資には不向きだと考えています。
なぜならレバレッジをかけると、指数と連動しにくくなる可能性があるからです。
実際、過去のレバレッジファンドの運用を見ると、ベンチマークとレバレッジの設定に乖離があるファンドが散見されます。
下落時にもレバレッジがかかることで、下落相場の際は想像以上にパフォーマンスが悪化する可能性があるのではないでしょうか。
また最長20年の非課税投資が可能な「つみたてNISA」でレバレッジファンドが対象外である点も、長期投資に不向きだと考えるポイントです。
「つみたてNISA」の対象ファンドの多くは、ベンチマークの値動きに連動する一般的なインデックスファンド。レバレッジファンドは含まれておらず、非課税メリットを活かした長期投資はできません。
したがって、レバレッジファンドは長期で継続してリスクを安定させる長期投資の考え方がなじみません。
長期投資よりも短中期投資でリスクをとり、ポートフォリオの一部として運用することをおすすめします。
レバレッジファンドはポートフォリオの一部として運用しよう
レバレッジファンドにはリスクがあり、長期運用ではベンチマークと乖離したパフォーマンスになる恐れがあります。
そのため、長期の資産形成でメインの投資先をレバレッジファンドにするのはおすすめできません。
しかし、レバレッジファンドには「上昇相場では強い」という特徴があります。
今後も成長が期待できる指数や市場をベンチマークにすれば、短期で大きなリターンを得ることも可能になるでしょう。
従来のレバレッジファンドは日本株市場を対象にしたものが主流でしたが、近年は米国株市場を対象にしたファンドが続々と設定されています。
世界経済の中心である米国株市場は今後も大きな伸びが期待できるため、レバレッジをかけて利益を取りにいくのも一つの投資戦略です。
もちろん、将来のパフォーマンスがどうなるか保証はありません。
投資に対する価値観も投資戦略も人それぞれですので、レバレッジファンドをメインの投資先にすることも間違いだとは言えません。
ポートフォリオに正解はないため、特徴やメリット・デメリットを理解したうえで活用しましょう。
まとめ
レバレッジファンドはベンチマークの値動きにレバレッジをかけ、リスクをとって高い収益性を目指す投資信託です。
ベンチマークの調子が良ければ大きなリターンを期待できますし、調子が悪ければ大きな損失を被ることもあるでしょう。
つまり良いパフォーマンスを得るためには、成長が見込める指数や市場をベンチマークにしたファンドを選ぶことが大切です。
ベンチマークとして期待値が高いのは、経済の中心である米国株式市場です。
S&P500やNASDAQといった米国株式指数をベンチマークとするレバレッジファンドであれば、ポートフォリオの一部に組み込み高い収益を目指すのも一つの投資戦略でしょう。
ただしレバレッジファンドは、長期の非課税投資制度であるつみたてNISAを利用できません。
また長期の投資でベンチマークと連動しにくくなる可能性もあります。
あくまで短中期の投資として、サブ的な位置づけでポートフォリオに含めることをおすすめします。