資産運用における利回りとは?株式や太陽光発電など投資商品ごとの計算方法を解説
この記事の目次
投資では、対象になる株式や不動産、太陽光発電などの利回りを確認しておくことが大切です。
この記事では、投資をするときに知っておきたい利回りの考え方と、投資商品の利回りの計算方法について解説します。
投資商品の利益には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」がある
投資商品の利益には、「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」の2種類があります。
キャピタルゲインとは、株式や債券など保有している投資商品を売却することによって得られる売買差益のことです。
たとえば、株価10万円で購入した株式を株価が20万円になったときに売却した場合、差額の10万円がキャピタルゲインになります(手数料や税金を除く)。
キャピタルゲインは株や債券だけでなく、不動産やFX(外国為替証拠金取引)、金(ゴールド)などを売買することでも得られます。
キャピタルゲインは、インカムゲインよりも大きな利益を狙えます。ただし、損失がでる(キャピタル・ロス)可能性もあります。
一方のインカムゲインとは、株式や債券・不動産などの資産を保有している間に得られる収益で、株式では「配当金」、債券では「利子」、不動産では「家賃収入」がインカムゲインです。
また太陽光発電投資では「売電収入」がインカムゲインになります。
インカムゲインは資産を保有し続けるだけで安定的、継続的な収入を期待できます。ただしインカムゲインは業績などによって金額が変動し、支払われないこともありますので注意が必要です。
投資商品の利回りとは
利回りとは、投資金額に対する収益の割合のことです。
利回りには利息だけでなく、投資商品を売却したときの売買損益(キャピタルゲイン、キャピタルロス)も含まれます。
通常は、1年間の年間利回りを「利回り」と呼びます。
たとえば、100万円投資して1年後に2万円の利息を受け取り、103万円で売却したときの利回りは、以下の通りです。
(年間利息2万円+売却益3万円)÷100万円×100=5%
投資商品のリスクとリターンを考える
利回りは投資商品によって大きく異なります。そして高い利回りを狙うと、その分リスクが高くなる傾向にあります。
ですから、「リスク」と「リターン」のバランスを考えておくことが大切です。
リターンとは、投資で得られる収益。そして、リスクとは結果が不確実であること、つまりリターンの振れ幅を意味します。
以下の図をご覧ください。有価証券Aと有価証券Bの価格の変動幅を表しています。
有価証券Aより有価証券Bの方が価格変動幅は大きいので、「有価証券Bの方がリスクは高い」と判断するのです。
リスクとリターンの関係には密接な関係があります。リスクを抑えようとするとリターンは低下し(ローリスク・ローリターン)、高いリターンを狙うとリスクも高くなるのです(ハイリスク・ハイリターン)。
ですから、リスクが低くてリターンが高い投資商品は存在しません。主な投資商品のリスクとリターンの関係は、以下の通りです。
それでは、それぞれの投資商品の利回りについて見ていきましょう(税金や手数料は考慮せず)。
債券投資の利回り
債券投資では、利率と利回りの違いを理解しておかなければいけません。それぞれの違いを解説します。
債券の利率とは
利率とは、債券の額面金額(債券の券面に記載されている金額)に対して毎年受け取る利息の割合のこと。
債券の利率は、発行体の信用力や発行するときの金利水準などによって決められます。
たとえば債券を100万円購入し、1年後に3万円の利息を受け取る場合、利率は3%になります。計算式は以下の通りです。
3万円÷100万円×100=3%
債券の利回りとは
債券の利回りとは、利息だけでなく、購入金額に対する売買損益も含めた年間収益のこと。
利率3%の債券を100万円購入し、1年後に102万円で売却した場合の利回りは以下の通りです。
(利子3万円+売却益2万円)÷100万円×100=5%
株式投資の利回り
株式投資の利益には、インカムゲインである配当金と、キャピタルゲインである売却益があります。
たとえば、一株当たり1,000円のA社株を100株買ったとします。一株当たりの配当金が10円、そして1年後に1,100円で売却したときの利回りは、以下の通りです。
配当利回りとは
株式投資の利回りは売買損益(キャピタルゲイン・キャピタルロス)によって大きく変わりますが、中長期投資で配当狙いの場合、「配当利回り」が銘柄選びの判断基準として用いられることがあります。
配当利回りの計算式は、以下の通りです。
- 配当利回り(%)=(一株当たりの配当金 ÷ 購入株価)× 100
先ほどの例の配当利回りは、以下のようになります。
一株当たりの配当金10円÷1,000円×100=1%
2020年8月21日終値における東証1部銘柄全銘柄の予想平均配当利回りは1.77%です。
通常、配当利回りが3%以上の株式を「高配当銘柄」といいます。
投資信託の利回り
投資信託の収益などから投資家に還元する分配金を測る目安に、「分配金利回り」があります。
分配金利回りとは
分配金利回りの計算式は、以下の通りです。
- 分配金利回り(%)=過去1年間の分配金÷直近の基準価格×100
過去1年間の分配金が500円で、直近の基準価額が8,000円の投資信託の分配金利回りは、以下のようになります。
500円÷8,000円×100=6.25%
ただし、分配金利回りが高いからといって、必ずしも得をしているとは限らないので注意が必要です。
投資信託の分配金には、運用成果から支払われる「普通分配金」だけでなく、元本を取り崩して支払われる「特別分配金」があるからです。
投資信託の基準価額は分配金を支払っただけ下がるので、元本を取り崩して分配金を支払い、基準価額が下がればそれだけ分配金利回りも高くなります。
つまり分配金利回りが高くても、基準価額の騰落を加えた実質的な利回りはマイナスという場合もあるのです。
トータル・リターンで損益を確認する
投資信託の利益には、「基準価額の値上がり益」と「分配金」の2種類があります。
そして、投資信託の新規買付け時から算出基準日までの全期間を通じた損益金額を収益率とし、パーセンテージで表したものを「トータル・リターン」といいます。
近年、「毎月分配型ファンド」など分配金を多くだす投資信託が販売され、投資家からは「結局どの程度の利益がでているのかわからない」といった声が聞かれるようになりました。
そこで、2014年12月1日以降、投資信託を販売する銀行や証券会社などの金融機関に対し、「トータル・リターン通知制度」として定期的(年1回以上)に投資家に通知することが義務付けられたのです。
投資信託は、分配金利回りではなく、トータル・リターンを確認するようにしましょう。
不動産投資の利回り
不動産の利回りには表面利回りと実質利回りがあります。
表面利回りと実質利回りの違い
不動産投資では、「収益物件の利回りが10%」などと書かれていることがあります。
多くの場合、表面利回りが書かれているため、注意が必要です。
不動産投資の利回りには、おおまかな物件の収益力を把握するための「表面利回り」と、さまざまなコストを含めた「実質利回り」があります。
不動産の利回りでは、表面利回りだけではなく、実質利回りを計算することが大切です。
表面利回りとは
表面利回りとは、年間家賃収入の総額を物件価格で割った数字。
最初に対象物件を絞り込む指標になるのが、この「表面利回り」なのです。表面利回りの計算式は、以下の通りです。
- 表面利回り(%)=年間収入(満室時の年間の家賃収入)÷物件価格×100
実質利回りとは
実質利回りとは、年間の家賃収入から固定資産税や管理費など諸経費を差し引き、物件価格に購入時の諸経費(登録免許税など)を足した値で割った数字です。
実質利回りの計算式は、以下の通りです。
- 実質利回り(%)=(年間収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100
以下の物件の利回りを計算してみましょう。
- 不動産の物件価格が2,500万
- 購入時の諸経費150万円
- 年間の家賃収入が250万円
- 不動産保有時の諸経費が年間50万円
表面利回り(%)=250万円÷2,500万円×100=10%
実質利回り(%)=(250万円-50万円)÷(2,500万円+150万円)×100=7.5%
表面利回りと実質利回りでは、2.5%もの差になるのです。
ただし、実質利回りは瞬間的な数字でしかありません。
実質利回りの計算結果は、毎年変わる可能性が高いからです。
ですから、不動産会社が物件の広告を扱う際には、表面利回りを使うのが通常です。
物件を選ぶ際は、不動産会社が提示している表面利回りをまず確認し、実質利回りを自分で計算するようにしましょう。
不動産の実質利回りについては、以下の記事に詳しく書いてあるので参考にしてください。
太陽光発電投資の利回り
太陽光発電投資の利回りも、「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。
表面利回り
太陽光発電の物件に記載されている表面利回りとは、おおまかな収益の指標です。
表面利回りの計算式は、以下の通りです。
- 表面利回り=年間売電収入÷初期投資費用×100
初期投資費用が500万円で年間の売電収入が50万円であれば、表面利回りは10%になります。
実質利回り
太陽光発電投資の実質利回りの計算式は、以下の通りです。
- 実質利回り=(年間売電収入-年間支出)÷初期費用×100
太陽光発電投資も不動産投資と同じように、「実質利回り」で利回りを考えるようにしましょう。
投資対象を選ぶ際は、「利回り」を考える必要があります。
しかし、債券や株式、投資信託、不動産、太陽光発電など、投資商品によって利回りの考え方は異なります。
それぞれの投資対象の利回り計算方法をきちんと理解しておくようにしましょう。