オルタナティブ投資とは?メリット・デメリットと種類について解説
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オルタナティブは「代替の」「代わりの」といった意味です。
そして、オルタナティブ投資とは、債券や株式といった「伝統資産」と呼ばれるもの以外の、新しい投資手法や投資対象のことをいいます。
近年、個人投資家が利用できるオルタナティブ投資が増加しています。この記事では、オルタナティブ投資のメリット・デメリットや、どのような種類があるのかについて解説します。
オルタナティブ投資の魅力
オルタナティブ投資の具体的な投資商品としては、貴金属や農産物などのコモディティ(商品)や不動産、先物やオプションなどのデリバティブなどがあります。
オルタナティブ投資は、一般の個人投資家にはあまり馴染みのない投手手法ですが、機関投資家の運用などではよく利用されています。
たとえば、為替の変動リスクを軽減するため、先物やオプション取引などを利用することはよくあるのです。
また、オルタナティブ投資は伝統的資産である債券や株式との相関が低いので、伝統的資産にオルタナティブ投資を組み合わせることで、運用資産のリスクを抑えつつ、より高いリターンが期待できます。
年金もオルタナティブ投資を利用している
公的年金や企業年金などの機関投資家も、オルタナティブ投資をおこなっており、その割合は増えています。
カルパースのポートフォリオ
米国最大の公的年金基金を運用しているカルパース(カリフォルニア州退職年金金)は、ポートフォリオにオルタナティブ投資を組み入れています。
カルパースのポートフォリオは、以下の通りです。
- 世界株式:50%
- 世界債券:28%
- 不動産:13%
- プライベートエクイティ:8%
- 米国短期国債など:1%
GPIFのオルタナティブ投資
日本の公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、資産全体の5%を上限としてオルタナティブ投資をおこなっています。
2019年3月末時点での時価総額は、4,327億円です。
GPIFのオルタナティブ投資では、長期にわたり安定的な家賃収入や利用料収入が見込める案件に投資しています。
具体的には、風力発電施設などのインフラストラクチャー(社会基盤)や、物流施設やオフィスなどの不動産です。
2019年3月末時点で、GPIFの運用資産に占めるオルタナティブ投資の割合は0.26%にすぎませんが、今後、どのようなオルタナティブ投資をおこなうのかが注目されています。
どのような投資家がオルタナティブ投資に向いている?
オルタナティブ投資の本来の目的は、株式や債券などの伝統資産のリスクヘッジです。
ですから、伝統的資産を保有しているすべての人にメリットがあります。
とくに、保有資産が1億円を超えているような投資家は、資産を増やすだけでなく、いかに守るかという点も重要になるのです。
「卵を1つのかごに盛るな」という相場格言があります。
卵を1つのカゴに盛ると、カゴを落とした場合、すべての卵が割れてしまいます。
しかし、複数のカゴに卵を分けて盛っておけば、一つのカゴを落とし、そのカゴの卵が割れてしまっても、ほかの卵は影響を受けません。
つまり、特定の商品だけに投資するのではなく、複数の商品に投資してリスクを分散させた方がいいという教えなのです。
株や債券などの伝統的資産だけでは、十分な分散効果はありません。
しかし、不動産やインフラストラクチャー(太陽光発電・風力発電)などのオルタナティブに分散投資することで、リスクを軽減させながら高リターンを目指せるのです。
オルタナティブ投資のメリット
オルタナティブ投資のメリットは、主に次の2つです。
収益機会が増える
オルタナティブ投資は、未公開株や不動産、インフラストラクチャーなど伝統的資産と値動きが異なる資産に投資します。
そして、現物の不動産やインフラストラクチャー投資では多額の資金が必要になりますが、私募ファンドなどを通じて、個人投資家でも投資しやすくなっているものもあります。
近年、オルタナティブ投資の小口化が進んだことで、個人投資家にも収益拡大のチャンスが増えています。
株式市場が下落しているときでも利益が狙える
株式市場が下落しているときでも、先物やオプション取引などのオルタナティブ投資を利用すれば、利益を狙えます。
オルタナティブ投資をしているヘッジファンドは「絶対収益」を追求しており、どんな相場局面でも利益を狙うのです。
株式市場が下落している、もしくは低迷している局面でも利益を狙えるということは、オルタナティブ投資の大きなメリットといえるでしょう。
オルタナティブ投資のデメリット
オルタナティブ投資のデメリットは、主に次の3つです。
仕組みが複雑
オルタナティブ投資は、従来の投資対象になかった資産に投資するものや、先物やオプションなど複雑なデリバティブ商品もあります。
そして、仕組みが複雑になると、コストが余計にかかっていることに気づかない可能性もあるので注意が必要です。
また、ハイリスク・ハイリターンの金融商品もあるので、仕組みを理解しないで投資すると、大きな損失をだす恐れもあります。
どのような仕組みになっているのか、どの程度のリスクを負っているのかをきちんと理解してからオルタナティブ投資をするようにしましょう。
大口投資家向けの商品が多い
オルタナティブ投資の一種であるヘッジファンドやプライベートエクイティファンドは、機関投資家や富裕層などの大口投資家を対象にしています。
最低投資金額が1億円というファンドもあり、一般投資家が投資したいと思っても、その要件を満たしていないこともあるのです。
ただ、最近は小口化したファンドも増えています。
通常、多額の資金が必要な不動産や太陽光発電などでも、数万~数十万円から買えるファンドもあるのです。
オルタナティブ投資の種類
個人投資家でも取り組みやすいオルタナティブ投資を紹介します。
J-REIT(日本版不動産投資信託)
J-REITは、多くの投資家から集めたお金で、商業施設やマンション、オフィスビルなど複数の不動産を購入します。
主に賃貸収入から得た利益を投資家に分配する商品です。
J-REITは不動産に投資しますが、法律上は投資信託になります。証券取引所に上場しているので、株式のようにリアルタイムで取引できるという特徴があります。
また、多くの投資家から資金を集めて運用するので、個人では難しい複数の不動産への分散投資ができ、リスクを軽減できるのです。
実際の運用は不動産投資の経験豊富なプロが運用します。ですから、直接不動産に投資する場合に比べ、テナント管理や物件維持といった手間が省けるのです。
非上場の不動産ファンド(不動産クラウドファンディング)
J-REITは公募ファンドなので、不特定多数の投資家がいつでも売買できます。
一方の私募ファンドは、同じ不動産を対象としたファンドですが、特定の大口投資家を対象にした不動産ファンドです。
しかし、最近ではクラウドファンディングを利用することで小口化されており(不動産クラウドファンディング)、一般投資家も少額の資金で購入できるようになりました。
不動産クラウドファンディングとは、一般投資家から資金を募り、集まった資金を利用して不動産を取得して運営します。
そこから得られた利益を投資家に分配します。不動産クラウドファンディングでは物件の所在地や築年数、管理状態を確認することが可能です。
また、通常の不動産投資のような入居者管理や修繕などの面倒な手間やコストがかからないので、気軽にはじめられる不動産投資といえます。
コモディティ(商品)
コモディティとは、貴金属や農産物などの商品のことです。
コモディティの中でも貴金属はオルタナティブ投資の代表で、安全資産とされる「金(ゴールド)」に投資している投資家は多くいます。
金は「有事の金」と呼ばれているのをご存じでしょうか。
テロや戦争などの地政学リスク(有事)が高まると、政治や経済が混乱して金融システムや企業活動が停滞し、世界経済の先行きに不透明感が高まります。
すると、株や債券などの伝統的資産は売られる傾向にありますが、世界中で通用する金は安全資産とされ、買われる動きが強まるのです。
また、近年ではリーマンショックのような金融危機でも金が買われるようになってきています。
インフラ投資
インフラストラクチャーへの投資も、オルタナティブ投資です。
インフラストラクチャーとは、鉄道や道路、通信、発電所などの社会基盤のことです。
社会基盤として機能しているので、景気動向に影響を受けにくいという特徴があります。
最近は、インフラ投資のひとつである太陽光発電所に投資するインフラファンドが、安定性と利回りの高さで人気を集めています。
太陽光発電ファンドの特徴
太陽光発電などを対象とするインフラランドには、投資法人をSPC(投資ファンド)として利用する投資法人型インフラファンドと、GK-TKスキームを利用したインフラファンドの2種類があります。
投資法人型インフラファンドの仕組みはJ-REITに似ており、東京証券取引所に上場しているファンドもあります。
一方、GK-TKスキームを利用したインフラファンドは、証券取引所に上場できず、非上場のファンドのみです。
ですから、非上場のファンドは投資法人型のファンドに比べて流動性は劣ります。ただ、証券取引所に上場していないので、株式市場や国内外の景気動向などに影響を受けません。
ファンドと関係のない要因によって投資家の利益が左右される可能性は低いというメリットがあるのです。
まとめ
オルタナティブ投資は、株や債券などの伝統的資産との連動性が低く、ポートフォリオに組み入れることでリスクを軽減させながら高リターンを狙えるようになります。
ただし、仕組みが複雑な商品もあるので、きちんと仕組みを理解することが大切です。
個人投資家でも取り組みやすいオルタナティブ投資として、J-REITやコモディティ、インフラ投資ファンドなどがあります。
数万~数十万円といった少額から投資できるものもあるので、オルタナティブ投資をポートフォリオに加えることを検討してみてはいかがでしょうか。