障害年金とは?ケガや病気で障害を背負ったときの生活保障について
この記事の目次
私たちは、日常生活の中で、不慮の事故やケガ、病気等で常に障害を背負うリスクを抱えています。
ケガや病気で後遺症が残り、働けなくなったときに受けられる公的な生活保障について知っておくことは非常に重要です。
ここでは、ケガや病気で働けなくなる前に知っておきたい障害年金の基礎知識をわかりやすく解説します。
1.公的年金とは
公的年金には、老後に支給を受けられる老齢年金だけでなく、不慮の事故やケガ、病気等で支給が受けられる障害年金と亡くなった際に残された遺族に給付される遺族年金があります。
公的年金は想定外の際に支給を受けられる国の保険です。
公的年金制度には、すべての国民が対象になる国民年金(基礎年金)とサラリーマンや公務員等が対象になる厚生年金があります。
2.非常に重要な年金
筆者が社会保険労務士試験に向けて年金の勉強をしていたときに、講師から「みなさんが結婚して親となったときは、子どもが学生でも必ず国民年金を支払っておいてください。」と言われました。
なぜなら、男性はバイクに乗ることが増え、女性は海外旅行が多くなるからです。
学生生活を送る中で、年齢とともにトラブルや事故に巻き込まれる可能性が高くなります。
国民年金を支払っていないと、障害を背負ったときに国民年金の支給が受けられません。
その講師は、過去に「学生だからという理由で保険料を支払わず、不慮の事故等で障害を背負っても年金の支給を受けられなかった人」をたくさん見てきたそうです。
3.障害年金
私たちが日常生活を送る中で、不慮の事故やケガ、病気等によって仕事ができなくなり、収入が途絶えることがあります。それがいつなるのか、若い時になるのか年齢を重ねてなるのかはわかりません。
万が一、障害を背負った場合に支給される年金を障害年金といいます。
3-1.障害基礎年金・障害厚生年金
公的年金はすべての国民が対象になる国民年金(1階部分)とサラリーマンや公務員等が対象になる厚生年金(2階部分)に分かれています。
障害年金も1階部分の障害基礎年金と2階部分の障害厚生年金があります。
3-2.障害年金支給要件
障害年金が支給されるためには以下の要件を満たすことが必要です。
障害基礎年金の支給要件
障害基礎年金の支給要件は次の通りです。
- 国民年金に加入している間に、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)があること
※20歳前や、60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で、日本国内に住んでいる間に初診日があるときも含みます。- 一定の障害の状態にあること
- 保険料納付要件
初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
障害厚生年金の支給要件
障害厚生年金の支給要件は次の通りです。
- 厚生年金に加入している間に、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)があること
- 一定の障害の状態にあること
- 保険料納付要件
初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていることが必要です。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
3-3.障害基礎年金は障害の程度によって支給されない
病気やケガなどで障害を背負ってしまった場合、その程度によって1級から3級にわかれます。
1級が一番重く順に軽くなっていきます。
障害基礎年金が支給されるのは1級から2級までとなっており、3級では支給されません。
障害厚生年金は障害等級1級から3級まで支給され、3級に当てはまらない場合でも1回のみの障害手当金が支給される場合があります。
障害基礎年金に比べ、障害厚生年金のほうが手厚くなっていることがわかります。
3-4.視力の低下でも支給される
視力が悪くなった場合でも障害年金は支給されるケースがあります。
両眼の視力が0.1以下になった場合は、3級に該当するからです。
講師から「メガネやコンタクトで矯正しての0.1以下なので皆さんは給付されません。」と言われたことが深く記憶にのこっています。
視力の低下でも障害年金が支給されることを覚えておいてください。
3-5.初診日には注意が必要
障害厚生年金を受給するためには、初診日が非常に重要になります。
会社員が会社を退職した後に初診日がある場合には障害基礎年金しか支給されません。
大きな病気やケガの可能性がある場合には、退職前(厚生年金加入期間中)に病院で診察を受け、初診日を確定させなければならないことを覚えておいてください。
4.障害基礎年金の特徴
障害基礎年金の特徴として、病気や事故等の病院での初診日が国民年金の被保険者ではない20歳前であっても、20歳前に発生した傷病による障害により、20歳以後も障害等級に該当する状態である場合に20歳前傷病による障害基礎年金が支給されます。
通常、初診日時点の国民年金保険料の納付状況によって支給されるかどうかが決まります。
20歳前傷病による障害基礎年金は、国民年金保険料を支払っていない期間(被保険者ではない期間)に背負った障害に対して、20歳から障害基礎年金を支給する例外といえます。
20歳から国民年金の加入義務が生じますから、就職前(20歳以上の学生)に国民年金保険料を支払っていないと障害を受けたときに年金が支給されません。学生だからといって国民年金を滞納しないように注意しましょう。
金銭的な理由で支払いが難しい場合は、国民年金には在学中に保険料が猶予される学生納付特例制度や、失業や収入が少なくなった際に保険料免除や猶予の制度があります。
承認されればその期間は、受給資格期間に参入されますので、当てはまる方は利用されるとよいでしょう。
5.障害年金の支給額
障害年金はいくら支給されるのでしょうか。障害基礎年金と障害厚生年金にわけて解説します。
5-1.障害基礎年金
令和2年度の障害基礎年金支給額は、2級が781,700円となっており、1級はその金額の1.25倍(977,125円)です。
5-2.障害厚生年金
障害厚生年金は支払期間による報酬比例の年金額となります。少し複雑な計算となります。
具体的な計算式は次の図をご覧ください。
障害厚生年金も1級は2級の1.25倍の金額になります。
5-3.配偶者または子の加算
障害基礎年金または障害厚生年金の1級・2級の支給を受けられる方に生計を維持されている配偶者または子がいる場合は加算が付きます。
※子とは18歳到達年度の最初の3月31日までの子と20歳未満で障害等級が1級または2級の子
※配偶者とは65歳未満の配偶者
6.まとめ
このように不慮の事故やケガ、病気等で障害を背負ってしまった場合にも、年金が支給されます。自分自身が国民年金部分しか支給されないのか、厚生年金部分も支給されるのか。
万が一のときに、障害年金はいくらもらえるのか。
支給される障害年金額について家族構成を含めて把握し、不足部分は民間の保険や資産運用などでカバーしておけば安心した生活が送れるのではないでしょうか。
年金まめ知識
公的年金制度は保険であると伝えてきましたが、国民年金、厚生年金の根拠法は国民年金法、厚生年金保険法となっております。
「国民年金法」の「国民年金」と「法」の間に「保険」という文字が入っていないことにお気づきになりましたでしょうか。
保険とは保険料を支払い、保険事故があった際に支給されるものです。
国民年金は、保険料を支払っていない場合でも20歳前傷病による障害基礎年金が支給されます。
たった一つの例外が存在することで、法律名に「保険」という文字が入っていないと言われています。