太陽光発電は売電できなくなる?卒FIT後はどこに電気を売るの?

 

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FIT制度からFIP制度への移行、卒FITを迎える太陽光発電設備の増加などにより「太陽光発電は発電できなくなる」と不安に思う声もあります。

結論からお伝えすると、直近数年のあいだに太陽光発電が売電できなくなる可能性はほとんどありません。

ここでは「太陽光発電は売電できなくなる」という疑問に対して、住宅用・事業用太陽光発電の両方の観点からご回答します。

卒FIT後の太陽光発電も売電は可能

まず、卒FIT(FIT制度の適用期間を終えること)により、太陽光発電の売電ができなくなるのかという点はよく誤解が起こる部分です。

卒FITを迎えた際、必ずしも売電が継続できなくなるわけではありません。

たしかにFIT制度適用時の条件のまま売電を継続することはできません。

しかし、既存の売電先と別条件の契約を締結する、あるいは別の売電先と「卒FIT向けプラン」と呼ばれるような契約を交わすことで、FIT制度の適用終了後も売電を継続できるのです。

卒FIT後の認定再取得はできない

FIT制度の認定を受けた太陽光発電設備は、住宅用太陽光発電であれば最大10年、事業用太陽光発電であれば最大20年のあいだ、FIT制度により規定された価格で売電できます。

どちらも10年あるいは20年が経過し、卒FITを迎えたあとにFIT制度の認定を再取得することはできません。

そのため、卒FIT後にも売電を継続する場合はFIT制度を終えた太陽光発電設備のためのプランへ加入し、FIT制度とは異なる条件で売電することとなります。

2021年時点において、電力の買取価格がFIT制度を下回るプランが大半であるため、卒FIT後の売電収入はFIT制度の適用期間より劣る場合が大半でしょう。

太陽光発電は出口戦略が不可欠

FIT制度の認定を受けた太陽光発電設備は、いずれ卒FITを迎えて収益性が低下することになるため、卒FITの際に焦ることを防ぐために出口戦略を検討する必要があります。

卒FIT後に取れる出口戦略は新たな売電先を見つける以外にも選択肢があり、一般的には以下が候補として挙げられます。

  • 太陽光発電設備を廃棄する
  • 太陽光発電設備を中古市場に売却する
  • 発電した電力を自家消費する

すでに設備設置にかかった費用を回収できており、管理の手間を煩わしく感じるのであれば、廃棄は一般的な選択肢です。

とくに、収益獲得を目的として運用されることの多い事業用太陽光発電は、FIT制度の適用終了後に廃棄を検討するケースも珍しくありません。

また、太陽光発電設備そのものの資産価値は高くありませんが、FIT制度の適用中であれば、売電の権利に魅力を感じた投資家に売却できる可能性があります。

こちらも、投資家の割合が多い事業用太陽光発電の市場で検討される出口戦略です。

非常用電源として利用したり、節電に役立ったりする住宅用太陽光発電の場合は、売電目的の運用をFIT制度の適用中にとどめて、卒FIT後は自家消費を中心とする運用も選択肢に挙がります。

これらの出口戦略については以下の記事で詳しく解説しています。

将来的に太陽光発電は売電できなくなる?

「エネルギーミックスとは?2030年に向けたエネルギー問題解決への取り組み」の記事でも解説しているように、日本は再生可能エネルギーを主要電源とするための取り組みに力を入れています。

再エネ普及の観点から考えると目標達成にはまだ遠く、近いうちにFIT制度のような優遇措置を廃止することは難しいと思われるため、今後も太陽光発電を普及拡大させるための対応は継続されるものと予想できます。直近、数年のうちに太陽光発電が売電できなくなることはないと捉えて良いでしょう。

ただしFIT制度の開始以降、太陽光発電の売電価格は年々低下の一途をたどっているため、「売電できなくなる」といった兆候はないものの、収益性の低下には注意を払う必要があります。

2021年までの太陽光発電における売電価格の推移

前述の通り、太陽光発電が売電できなくなることはないと思われますが、収益目的の投資として費用対効果が低下していることは事実です。

以下は2017~2021年度までの5年間にわたる、売電価格の推移です。

年度 住宅用太陽光発電
(10kW未満)
事業用太陽光発電
(10kW以上50kW未満)
2021年度 19円 12円+税(※)
2020年度 21円 13円+税(※)
2019年度 出力制御対応機器設置義務なし:24円
出力制御対応機器設置義務あり:26円
14円+税
2018年度 出力制御対応機器設置義務なし:26円
出力制御対応機器設置義務あり:28円
18円+税
2017年度 出力制御対応機器設置義務なし:28円
出力制御対応機器設置義務あり:30円
21円+税

※自家消費型の地域活用要件あり。

上記の表が示す通り、5年のあいだに住宅用太陽光発電の売電価格は11円、事業用太陽光発電の売電価格は9円下がっています。

設備費用の低コスト化が進み、初期費用もいくらか安価になっていますが、売電価格の低下をカバーできるほどではないため、収益性の低下は明らかだといっても過言ではないでしょう。

以上の理由から、従来のように「太陽光発電は安定的にリターンを得られる投資」といった評価をしづらい局面を迎えてきました。

2019年問題は売電できなくなること?

FIT制度の施行当時(2009年)に認定を受けた住宅用太陽光発電が一斉にFIT制度の終了を迎えること、それにともなう対応についての懸念を「2019年問題」と呼んでいました。

つまり、2019年問題は「売電できなくなること」ではありません。

2019年問題では卒FITを迎えた設備が売電を継続できるか危惧されていましたが、新たに契約を締結することで引き続き売電できる状況になり、大きな問題には発展せず終息しました。

太陽光発電ファンドなら出口戦略が不要

太陽光発電はFIT終了後に収益性が低下し、さらに出口戦略を考案しなければならない点が投資のハードルを上げています。

また、個人規模の投資に用いられることの多い10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電は、「地域活用要件」と呼ばれる要件が設けられるため、さらに収益性が低下しています。

しかし、太陽光発電の市場そのものは依然成長が期待されていることも事実。

そこで、太陽光発電の普及に注力する日本の将来へ投資しつつ、環境保全と資産運用を両立できる方法として、弊社では「太陽光発電ファンド」を1つの選択肢として提唱しています。

なお、10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電に課せられた地域活用要件については、以下の記事で詳しく解説しています。

この先、地域活用要件にまつわる情報が登場するため、要件の詳細が気になる場合はこちらをご参照ください。

太陽光発電ファンドの仕組みとは

太陽光発電ファンドは、太陽光発電事業へ出資し、出資先の事業が得た収益の一部を分配してもらう金融商品です。

太陽光発電設備を自ら運用するのではなく、太陽光発電事業を行う者へ出資することで、間接的に太陽光発電設備のオーナーになるようなイメージです。

弊社が提供する『ソライチファンド』も太陽光発電ファンドの一種であり、以下のような流れによって運用されます。

太陽光発電ファンドの仕組み(運用の流れ)

  1. 出資者(投資家)が営業者(合同会社)に出資
  2. 出資金をもちいて営業者が太陽光発電設備に投資
  3. 営業者が太陽光発電設備をオペレーターに賃貸
  4. オペレーターの運用のもと、発電された電力は電力会社に売却
  5. 売電量に応じて、オペレーターは売電収入を獲得
  6. オペレーターが営業者に対して、賃借料を支払い
  7. 運営費用と内部留保を差し引いて出資者に分配

上記のように太陽光発電設備をオペレーター(株式会社ALLアセットパートナーズ)に賃貸し、賃料収入に基づく収益の一部を出資者(投資家)へ分配する仕組みです。

太陽光発電ファンドはどんな部分がメリット?

太陽光発電ファンドは少額から投資可能であることや、運用管理の手間が一切発生しないことがよく注目されますが、実は「卒FIT後の対応に悩まされない」という特長も重要です。

ここまでに述べた通り、太陽光発電が売電できなくなる可能性は薄いものの、太陽光発電設備を運用する場合は卒FIT後の出口戦略を考案する必要があります。

また、従来個人の投資に用いられていた10kW以上50kW未満の太陽光発電設備は、追加要件による収益性低下に直面しています。

太陽光発電ファンドへの投資は、これらの課題を回避する以下の特性を備えているのです。

  • 出口戦略の考案が不要
  • 小規模事業用太陽光発電の地域活用要件が適用外

太陽光発電ファンドは、あらかじめ設定された契約期間を迎えると、出資者とファンドの関係は終了します。

ソライチファンドの場合は契約形態により最大10年、あるいは最大20年の運用となり、そのあとの運用に出資者は関与しません。

そのため、出資者が自ら出口戦略を考案する必要がないのです。

また、太陽光発電ファンドを通じて運用に携わる案件には50kW以上の太陽光発電設備を扱うものも多くあります。

設備の発電出力が50kW以上の場合、10kW以上50kW未満のケースとは異なり、地域活用要件の適用対象となりません。

上記のメリットにより、通常の太陽光発電投資にある「卒FIT後に収益性が低下し、運用に困る」といった課題を回避できます。

まとめ

現状、太陽光発電が売電できなくなる懸念はほとんどなく、日本の主要電源の1つとして普及させるため、FIT制度のような優遇措置は継続するものと予想されます。

ただし、各設備がFIT制度の適用期間を終えたあとの収益性低下は、通常の太陽光発電投資では避けられません。

これらの理由から卒FITにともなう収益の落ち込みを避けつつ、将来性が期待される太陽光発電市場への投資手段として「太陽光発電ファンド」をぜひご検討ください。

太陽光発電ファンドの利回りやリスク、メリット・デメリットについては以下の記事で詳しく解説しています。

本記事とあわせてご参照ください。


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