太陽光発電の全量買取が終了?余剰買取しか選択肢はないの?

 

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2020年度以降、特定の条件下において小規模事業用太陽光発電が全量買取の対象から外れます。

そのため、個人規模の太陽光発電投資は選択肢が狭まることとなり、従来通りの投資効率を維持することが困難になりつつあるのです。

ここでは、2020年度を境に何が変更されたのか、個人が全量買取の太陽光発電を始めるならどのような選択肢が残されているのかご説明します。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • 10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電は全量買取が原則終了に
  • 2020年度に認定を受けた小規模事業用太陽光発電は自家消費が原則必要に
  • 全量買取の太陽光発電設備に投資するならファンドが有力

1.全量買取は終了?小規模事業用太陽光発電の要件変更

個人規模の投資にもちいられる10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電は、2020年度から適用される制度が変更され、地域活用要件が追加されました。

2019年度以前にFIT制度の認定を受けていれば、発電した電力をすべて売却できる「全量買取」を選択できたのですが、2020年度に認定を受けた小規模事業用太陽光発電では例外を除き、全量買取を選択できなくなったのです。

2020年度にFIT制度の認定を受けたものは、原則として自家消費をしたのちに余剰分の電力を売却する「余剰買取」の対象となります。

1-1.地域活用要件とは?

地域活用要件には、自家消費型と地域一体型があり、小規模事業用太陽光発電は自家消費型の地域活用要件が要求されます。

小規模事業用太陽光発電は自家消費型として原則次の2つの要件を満たさなければいけません。

  1. 当該再エネ発電設備の設置場所を含む一の需要場所において、発電電力量の少なくとも30%の自家消費を行うこと。又は、発電電力量の少なくとも30%について、電気事業法に基づく特定供給を行うこと。
  2. 災害時に活用するための最低限の設備を求めるものとして、災害時のブラックスタートが可能であることを前提とした上で、給電用コンセントを有し、当該給電用コンセントの災害時の利活用が可能であること。

資源エネルギー庁「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」

1つ目の要件は、余剰売電(余剰買取)を前提とした設備構造と事業計画を求めるものです。

2020年度の事業計画策定ガイドラインでは、少なくとも発電した電力の30%を自家消費するよう規定されています。

認定時に作成を義務付けられている「自家消費等計画」には、発電量や自家消費の用途・量の見込み、およびこれら2点から求められる自家消費の比率を年間ベースで示さなければなりません。

発電設備の運用開始後は、買取電力量の参照により自家消費の比率が維持されているか確認されることとなっています。

万が一、要件を満たしていないと判断されたものに関しては、認定取り消しなどの厳格な措置が講じられる取り決めです。

2つ目の要件は、災害時に発電設備を活用できるよう給電用コンセント・自立運転機能などを備えるよう促すものです。

自立運転機能は、停電時に外部電源に頼ることなく発電を再開させる「ブラックスタート」を可能とする、パワーコンディショナの機能です。

2.太陽光発電における余剰買取・全量買取の違い

2020年度における発電出力ごとのFIT制度における条件は、以下のようになっています。

発電出力 買取区分 電力買取価格
(2020年度)
調達期間
(FIT適用期間)
10kW未満 余剰買取 21円 10年間
10kW以上50kW未満
(地域活用要件あり)
原則余剰買取 13円+税 20年間
50kW以上250kW未満 全量買取 12円+税 20年間
250kW以上 全量買取 入札により決定 20年間

先ほど解説した通り、10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電(地域活用要件あり)は全量買取の対象から外れ、余剰買取の適用対象となりました。

例外として、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は条件を満たせば全量買取の対象となりますが、基本的には50kW以上の発電設備でなければ全量買取を選べないのです。

これにより、個人規模の太陽光発電投資にはどのような影響があるのでしょうか?余剰買取と全量買取のあいだにどのような違いがあるのか、あらためて詳しくご説明します。

2-1.余剰買取とは?

以下に当てはまるケースは、発電した電力を自宅や事務所、工場などの電力として消費したあとに余剰分を売却する余剰買取の対象です。

  • 10kW未満の発電設備
  • 余剰買取を選択した10kW以上の発電設備
  • 2020年度に認定を受けた10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電

余剰買取は「余剰分の電力を売却する」という特性上、すべての電力を売却できる全量買取より劣るものと捉えられますが、必ずしも全量買取に優位性があるとは限りません。

FIT制度の電力買取価格は年々下がっており、場合によってはFIT制度の電力買取価格が電気料金を下回るケースもあるのです。

この場合は、電力を売らずに自家消費をする方が経済的合理性に優れているといえます。

そのため、事業用太陽光発電であっても、有効的に自家消費ができるのであれば2020年度における制度内容の変更は大きなマイナスになり得ません。

2-2.全量買取とは?

以下に当てはまるケースは、発電したすべての電力を売却できる全量買取の対象です。

  • 全量買取を選択した50kW以上の発電設備
  • 2019年度までに認定を受けた10kW以上50kW未満の発電設備
  • 条件を満たしたソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)の設備

全量買取の対象となる発電設備は、自家消費を必要とせず設備単体で収益を生み、2020年度のFIT制度においては災害時に活用するための準備も必須ではありません。

自家消費による電力の自給自足を考えておらず、純粋な投資目的で運用する場合は全量買取の発電設備が望ましいといえるでしょう。

なお、2020年度における制度内容の変更では、50kW以上の発電設備に対して新要件が課せられていないものの、資源エネルギー庁は「地域での活用実態やニーズを見極めつつ今後検討する」と公表しています。

つまり今後も、2020年度に続けて全量買取の適用範囲が縮小される可能性があるため、投資を検討する場合はFIT制度の動向にアンテナを張っておく必要があります。

3.2020年以降、個人の太陽光発電投資はどうなる?

2020年以降は制度変更により太陽光発電投資がどう変わっていくのでしょうか?

ここまでご説明した情報を踏まえて、個人規模の太陽光発電投資にどのような影響があるのかご説明します。

3-1.制度変更により投資効率が低下する

全量買取から余剰買取に変更され、2020年度にFIT制度の認定を受けた小規模事業用太陽光発電は、発電した電力のうち最大70%しか売却できません。

割合だけ見れば、2019年度までに認定を受けた太陽光発電設備より、売電収入が30%以上減少する計算です。

なお、2020年度の事業計画策定ガイドラインでは、30%以上と設定されましたが、調達価格算定委員会の「令和2年度の調達価格等に関する意見」をみると、2020年度の小規模事業型太陽光発電の固定買取価格(13円/kWh)は想定自家消費率を50%で決定していることがわかります。

FIT認定時の自家消費計画や運転開始後の取締りにおいて求める自家消費比率は、

(1)現時点では蓄電池コストが高い実態や、(2)屋根設置の太陽光発電事業は、当該建物内での事業形態に応じて様々な自家消費の在り方が想定され、運転期間中にも一定の上下動があり得ることから、住宅用太陽光発電における想定値を参考に、30%とすることとし、今後の動向を注視することとした。

その上で、調達価格の設定時における自家消費比率の想定値については、委員から、

  • 再エネ特措法において、調達価格の設定は、再エネ電気の供給が「効率的に」実施される場合に通常要する費用等を基礎とすることとされている趣旨を踏まえると、自家消費の便益よりも低い水準の調達価格を設定する仮定の下では、効率的な事業実施を想定し、FIT認定時等に求める最低限の自家消費比率よりも高く設定することが適当である、
  • 自家消費を主とした事業実施を促進する観点からは、自家消費比率の想定値を少なくとも50%と設定し、売電電力量よりも自家消費量が多い姿を想定すべきである、


との意見があったことを踏まえ、50%とすることとし、今後の動向を注視することとした。

調達価格算定委員会 令和2年度の調達価格等に関する意見

さらに、災害時に活用するための設備投資が必要になるため、発電量に直接関わる部分以外の初期費用が従来より増えます。

初期費用は増えるものの発電量は増加しないため、自家消費の必須化も相まって投資効率は下がり投資額回収までの期間が延びるのです。

3-2.全量買取を希望するなら選択肢はわずか

全量買取の対象となる10kW以上50kW未満の発電設備を運用したい場合、2019年度までに認定を受けた新築物件、あるいは中古物件を探して購入しなければなりません。

2020年9月現在、2019年度以前に認定を受けている新築物件はまだ存在しているため、全量買取を選択して太陽光発電投資を始めることは可能です。中古物件も視野に入れれば選択肢はさらに増えるでしょう。

ただし、優良案件はどんどん契約が決まっていくものと思われ、時間の経過とともに投資候補は絞られていきます。

50kW以上の発電設備であれば制度変更の影響を受けることなく全量買取を選択できますが、10kW以上50kW未満の発電設備に比べて案件数が少なく、必要な投資額も跳ね上がります。

キュービクルと呼ばれる設備の導入、電気主任技術者の監督が必須となることから維持コストも高額になり、個人規模の投資として適しているとはいえません。

そのため、全量買取の発電設備に投資したいのであれば、2019年度までに認定を受けた10kW以上50kW未満の発電設備、あるいは次章で解説する太陽光発電ファンドが有力になるでしょう。

4.今後は全量買取の選択肢として太陽光発電ファンドが有力

太陽光発電ファンドは、出資者から資金を集めて太陽光発電設備に投資し、売電収入に基づく収益の一部を出資者に分配する投資商品です。出資から分配までの構造はファンドにより異なり、弊社が提供する『ソライチファンド』の場合は下図のような仕組みにより成り立っています。

なお、太陽光発電設備をオペレーターに賃貸し、賃料収入に基づく収益の一部を分配する仕組みをとっている、ソライチファンドのような太陽光発電ファンドは「賃貸型スキーム」と呼ばれます。

4-1.なぜ全量買取の選択肢としてファンドがおすすめなのか

太陽光発電ファンドのなかには、設備規模が大きい「全量買取の対象となる発電設備」へ投資する商品が多々あります。

複数の出資者から資金を集めて事業投資を行うファンドだからこそ、個人でも全量買取の発電設備へ投資できるのです。

また、出資者を複数募るため1人あたりの最低投資額は少額となり、自己資金の範囲で無理なく太陽光発電投資を始められます。

たとえば、全量買取の太陽光発電ファンドであるソライチファンドの場合、1口50万円から投資が可能です。

一方、実物資産としての太陽光発電設備を購入する場合、10kW以上50kW未満の発電設備であっても1,000万~2,000万円の初期費用がかかるため、自己資金では賄えず借入を利用するケースは少なくありません。

全量買取を希望するなら、2019年度までに認定を受けた発電設備を購入するか、これより大きな初期費用をかけて50kW以上の発電設備を導入する必要があるため、手軽さという点では太陽光発電ファンドが有力なのです。

4-2.運用管理の面でもメリットあり

2020年以降も全量買取の発電設備に投資ができる点、少額から投資ができる点以外にも、太陽光発電ファンドへ投資をするメリットはいくつかあります。代表的な長所は以下の2つです。

  • 設備運用を専門家に一任できる
  • 値動きを気にせず資産形成ができる

太陽光発電ファンドの運用において、出資者が行うべき作業は出資のみです。

日々の運用業務やメンテナンスは専門家によって行われ、出資者自身が時間を割いて設備管理に携わることはありません。

自主管理や管理業務の外注が必要となる実物資産の運用に比べ、太陽光発電ファンドは管理コストがかからない投資手法だといえます。

また、太陽光発電設備にのみ投資をする非上場ファンドは、上場株式や投資信託とは異なり原則として売買が行われません。

値動きがなく、出資以降に市場動向やチャートの確認が必要となることはないため、運用中は情報収集のために時間を割く必要がない点もメリットです。

5.まとめ

2020年、10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電が全量買取の対象から外れたため、個人の投資家が太陽光発電投資を始める際の選択肢は絞られつつあります。今後、全量買取の発電設備に投資をする方法としては、2019年度までに認定を受けた発電設備か、全量買取の太陽光発電ファンドがメインになるでしょう。

太陽光発電ファンドについては以下記事で詳しく解説しているので、全量買取の発電設備へ少額投資を検討している場合はご参照ください。


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