2020年度の設置費用|売電価格から見た太陽光発電の費用対効果は?

 

この記事の目次

太陽光発電設備の設置費用は、年々安価になっていることをご存知でしょうか?

ここでは、2020年度の時点で公表されている情報をもとに、太陽光発電設備の設置費用をご説明します。

太陽光発電設備を運用する3つの手法を比較し、希望予算に合致する選択肢の判断にご活用ください。

1.2020年度における太陽光発電の設置費用は?

太陽光発電設備の設置費用は、発電出力によって1kWあたりの単価が異なります。

そのため、設置費用の概算を求めるのであれば、規模別に太陽光発電の単価を確認することが必要です。

ここでは、2020年度における太陽光発電の設置費用をご説明します。

1-1.10kW未満|住宅用太陽光発電の設置費用

発電出力が10kW未満の太陽光発電は「住宅用太陽光発電」に分類されます。

住宅用太陽光発電における、発電出力1kWあたりの設置費用(工事費用+設備費用)は以下の通りです。

算出対象 1kWあたりの設置費用(2019年時点)
全体の平均 32.1万円
既築の平均 34.6万円
新築の平均 30.6万円

出典:調達価格等算定委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見」

3~9kW程度の太陽光発電設備を想定するのであれば、設置費用はおおむね100万~300万円程度となる計算です。

なお、調達価格等算定委員会の資料によると、1kWあたり30.6万円である新築物件の場合、設置費用の内訳はつぎのようになっています。

費用の内訳 1kWあたりの費用(2019年時点)
工事費 6.5万円
太陽光パネル 19.5万円
パワーコンディショナ 4.5万円
架台 2.3万円
その他 0.3万円
値引き ▲2.4万円

出典:調達価格等算定委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見」

1-2.10kW以上|事業用太陽光発電の設置費用

発電出力が10kW以上の太陽光発電は「事業用太陽光発電」に分類されます。

事業用太陽光発電における、発電出力1kWあたりの設置費用(工事費用+設備費用)は以下の通りです。

算出対象 1kWあたりの設置費用(2019年時点)
全体の平均値 26.6万円
10kW以上50kW未満の平均値 26.8万円
50kW以上500kW未満の平均値 21.0万円
500kW以上1,000kW未満の平均値 21.5万円
1,000kW以上の平均値 22.2万円

出典:調達価格等算定委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見」

上記をもとに計算すると、40kWの太陽光発電設備であれば1,000万円程度、200kWの太陽光発電設備であれば4,200万円程度といった風に、設置費用の概算を求められます。

ただし立地や施工方法、太陽光パネルの種類など、諸々の条件によって設置費用は大きく変動するため、あくまで目安として捉えてください。

費用の内訳  1kWあたりの費用(2019年時点)
工事費 6.4万円
太陽光パネル 14.1万円
パワーコンディショナ 4.1万円
架台 2.8万円
その他 1.9万円
値引き ▲2.7万円

出典:調達価格等算定委員会「令和2年度の調達価格等に関する意見」

2.2020年度における太陽光発電の売電価格は?

太陽光発電設備は、FIT制度の認定を受けることで一定期間の電力買取が保証され、期間中は売電価格が固定されます。

FIT制度により規定された売電価格は、太陽光発電設備の発電出力に応じて異なり、2020年度は以下が基準となっています。

設備規模(発電出力) 2020年度の売電価格 FIT制度の適用期間
住宅用太陽光発電
(10kW未満)
21円 10年間
小規模事業用太陽光発電
(10kW以上50kW未満)
13円+税
※地域活用要件あり
20年間
事業用太陽光発電
(50kW以上250kW未満)
12円+税 20年間
事業用太陽光発電
(250kW以上)
入札により決定 20年間

2-1.太陽光発電の余剰買取・全量買取について

太陽光発電は発電出力・FIT制度の認定年度によって、余剰買取と全量買取のうち適用される買取方式が異なります。

  • 余剰買取:自家消費後、余剰分の電力を売却する
  • 全量買取:発電したすべての電力を売却する

このうち、余剰買取が適用されるケースと、全量買取を選択できるケースは以下のように区分されます。

余剰買取が適用されるケース 全量買取を選択できるケース
  • 10kW未満の太陽光発電設備
  • 2020年度以降にFIT制度の認定を受けた10kW以上50kW未満の太陽光発電設備
  • 50kW以上の太陽光発電設備
  • 2019年度以前にFIT制度の認定を受けた10kW以上50kW未満の太陽光発電設備

上記のように、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備であっても、2020年度以降にFIT制度の認定を受けたものは余剰買取が適用されます。

2020年度から「地域活用要件」として、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備に2つの条件が課せられたからです。

  • 余剰買取を前提とした設備構造・事業計画が必要
  • 災害時に活用するための設備が必要

例外として、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備のうち、2020年度以降にFIT制度の認定を受けたものであっても、災害時に活用可能なソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は全量買取の対象となります。

ただし、ソーラーシェアリングは太陽光発電と同時に営農が必須となるため、農業従事者以外が手掛けることは現実的ではありません。

余剰買取と全量買取の比較、地域活用要件についての詳細は以下の記事で解説しています。2020年度以降、太陽光発電への投資を検討している方は一度ご参照ください。

2-2.売電価格から見た太陽光発電の費用対効果は?

FIT制度による売電価格は年々減額されていますが、同時に太陽光発電設備の設置費用も下がっているため、費用対効果の低下は緩やかではあります。

住宅用太陽光発電の場合、自家消費の割合が大きいなら費用対効果の低下は限定的でしょう。

一方、新たに地域活用要件が設けられた小規模事業用太陽光発電は、2019年度以前に比べて費用対効果が大幅に下がっていると考えられます。

融資を利用する場合、金利によってはほとんど利益が出ない可能性があり、条件によってはトータル収支が実質的にマイナスとなるおそれもあるでしょう。

そのため、とくに小規模事業用太陽光発電は、収益性が高くなりづらい状況にあることを認識し、シビアに投資判断を下すようおすすめします。

3.太陽光発電は住宅用と事業用どちらがおすすめ?

住宅用太陽光発電と事業用太陽光発電は、それぞれに一長一短があり、一概にどちらが優れているとはいえません。

しかし、太陽光発電に求める成果が明確であれば、どちらがおすすめなのか判断を下せます。

ここでは、どのような場合に住宅用太陽光発電、あるいは事業用太陽光発電が適しているのかご説明します。

3-1.住宅用太陽光発電の設置が候補となるケース

主に家屋の屋根に設置される住宅用太陽光発電は、事業用太陽光発電との相違点として以下の特徴を持っています。

  • 余剰買取である
  • 設置費用が比較的安価
  • 蓄電池の併用により自宅の停電対策になる

まず、一部を除いて全量買取の対象となる事業用太陽光発電とは異なり、住宅用太陽光発電は余剰買取の対象です。

売電収入を得るための太陽光発電というよりも、自宅の電力を賄うための太陽光発電だと認識した方が実際のイメージに近いでしょう。

住宅用太陽光発電の設置費用は100万~300万円程度であり、少なくとも1,000万円の設置費用がかかる事業用太陽光発電に比べて安価です。

融資を利用することなく、自己資金から捻出できる設置費用であるため、大きなリスクを抱えずに太陽光発電を始められます。

また、発電した電力を蓄えるために蓄電池を導入し、停電へ備えることも可能です。

太陽光発電設備だけでも非常用電源として活用できますが、曇りや雨により発電できなければ発電量はわずか。

蓄電池があれば、晴れの日に蓄えていた電力を使えるため、地震や台風時の停電対策として心強い存在になります。

直接金銭で受け取れるリターンの大きさ、FIT制度の適用期間の長さは事業用太陽光発電に劣ります。

一方、家計の負担軽減・停電対策といった明確なメリットがあるため、住宅用太陽光発電は「自宅を基軸として生活を豊かにする」といった場合に適した太陽光発電だといえます。

3-2.事業用太陽光発電の設置が候補となるケース

主に空き地、工場の屋根に設置される事業用太陽光発電は、住宅用太陽光発電との相違点として以下の特徴を持っています。

  • 物件次第では全量買取を選べる
  • 設置費用を融資により調達できる
  • 長期の収益予測が立てやすい

2020年以降、10kW以上50kW未満の太陽光発電設備に関しては、地域活用要件によって売電できる電力が最大70%にまで下がりました。

さらに、災害時に活用するための設備投資が必須化されたため、期待収益の低下に反して投資額は高くなります。

そのため、個人が投資目的で太陽光発電を始めるのであれば、2019年度以前にFIT制度の認定を受けたものが有力候補となるでしょう。

発電出力が50kW以上になると、電気主任技術者の選任やキュービクルと呼ばれる設備の設置等が義務となり、より負担が増えるため個人の一基目として現実的ではないからです。

一方で、設置費用を融資によって調達できる点、20年間のFIT制度適用により収益予測が立てやすい点は、依然としてすべての事業用太陽光発電に共通する特徴です。

リスクとリターンを考慮して慎重な案件選定を行うなら、今後も投資先の選択肢の1つとして検討する余地があります。

4.設置費用を「高い」と感じるならファンドが有力

相対的に安価である住宅用太陽光発電でも、設置費用として100万~300万円ほどのまとまった金額が必要です。

事業用太陽光発電も、フルローンで設置費用を賄える可能性はありますが、大きな借金を背負って発電事業を始めることには不安を感じるものです。

一方、太陽光発電ファンドは、少額から太陽光発電事業に出資ができます。

複数の出資者から集めた資金を事業投資に充てる「ファンド」の仕組みをとっているため、最低投資額は少なく設定されているのです。

以下の記事では、弊社が提供する『ソライチファンド』を例にして、太陽光発電ファンドの基礎知識を解説しています。

太陽光発電ファンドであれば、2020年度以降も全量買取の太陽光発電設備に出資できるため、住宅用・事業用太陽光発電が条件にあわない場合はご参照ください。

5.まとめ

太陽光発電設備は、発電出力に応じて1kWあたりの単価が異なります。

太陽光発電を始める際、予算感を算出するのであれば、今回ご説明した発電出力ごとの単価を目安の1つとしてください。

このほか、当メディアでは太陽光発電に関するさまざまな情報を発信しています。記事カテゴリ「太陽光発電」から、気になるテーマのコンテンツをご参照ください。


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