相続税が大幅減!小規模宅地等の特例が適用される不動産とは
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土地を相続すると高額の相続税が課されると思われがちですが、実際には相続税を減額するさまざまな特例が用意されています。
そのうちの一つが「小規模宅地等の特例」という制度。
小規模宅地等の特例を適用すると、自宅などの土地を相続した際の相続税を大幅に減額できる可能性があります。
不動産を相続する場合、小規模宅地等の特例が適用できるか確認することが必要です。
不動産相続について、小規模宅地等の特例の制度概要や適用するための要件などを詳しく説明します。
なお、以下の解説は令和2年4月1日時点の税制に基づくものです。 税制については頻繁な改正があるため、実際に制度の利用を検討する際には最新情報をご確認ください。
- 小規模宅地等の特例を適用すると相続税の課税価格が50%または80%減額される
- 小規模宅地等の特例は自宅のほか事業用の土地にも適用できる
- 相続時精算課税制度や個人版事業承継税制の適用を受けると、小規模宅地等の特例は適用できない
1.相続税における「小規模宅地等の特例」とは?
土地を相続する場合、小規模宅地等の特例を利用すると相続税を大幅に節税できる可能性があります。
1-1.小規模宅地等の特例とは
※一定の宅地等とは、建物又は構築物の敷地の用に供されている宅地等(農地及び採草放牧地は除く)
注意点として、特例を適用できるのは土地のみであり、土地上の建物や構築物には適用できません。
なお、居住用に利用する「宅地等」に限定されず、一定の条件を満たした事業用の土地も適用が可能です。
小規模宅地等の特例によって相続税の課税価格が減額される割合は、土地の種類によって異なります。
また、土地の種類ごとに定められた「限度面積」までの部分について減額できます。
1-2.小規模宅地等の特例が適用されない土地
以下の土地については、小規模宅地等の特例を適用できません。
- 相続時精算課税に係る贈与によって取得した土地
- 個人の事業用資産について贈与税または相続税の納税猶予及び免除を受けた土地
- 農地や採草放牧地、棚卸資産やこれに準ずる資産
相続時精算課税の適用を受けた土地
「相続時精算課税制度」とは60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し、財産を生前贈与した場合に合計2,500万円の贈与分まで贈与税が課税されないという制度です。
相続時精算課税制度を利用するかは生前贈与の際に選択することができます。
すでに相続した宅地について、生前に相続時精算課税制度の適用を受けた場合には相続時に小規模宅地等の特例は適用できません。
個人事業用資産の相続税等の納税猶予及び免除を受けた土地
「個人の事業用資産についての贈与税または相続税の納税猶予及び免除」というのは、令和元年度の税制改正によって創設された「個人版事業承継税制」と呼ばれる制度を指しています。
具体的には、青色申告にかかる事業の後継者として認定を受けた者が、平成31年1月1日から令和10年12月31日までに事業用の資産の贈与または相続を受けた場合、贈与税または相続税の納税が猶予及び免除される制度です。
ただし、アパート経営などの不動産貸付業等に関しては、個人版事業承継税制の適用対象外です。
個人版事業承継税制が適用されている土地は、すでに相続税の納税猶予や免除といった優遇を受けているため、小規模宅地等の特例が適用されません。
農地や採草放牧地、棚卸資産などの土地
小規模宅地等の特例が適用される土地は、建物や構築物の敷地として利用されている土地です。
したがって、農地や採草放牧地、棚卸資産やこれに準ずる資産は除外されます。
棚卸資産となる土地とは、第三者への転売を目的として保有している土地です。
これに対し、賃貸目的で保有する土地は棚卸資産ではなく「固定資産」となります。
不動産投資用に取得した土地は、保有の目的次第で棚卸資産と評価され、小規模宅地等の特例を受けられない可能性があるため注意が必要です。
1-3.小規模宅地等の特例が設けられた理由
小規模宅地等の特例が創設された背景として、宅地や事業用地は相続人の生活基盤の維持や事業の継続にとって必要不可欠であるという視点があります。
相続人の生活基盤となる土地に高額の相続税が課されるとすれば、相続税の支払いのために土地を手放さざるを得なくなることが起こりえます。
そこで、一定の面積以下の小規模宅地等について相続税の負担を軽減したのが、小規模宅地等の特例です。
2.小規模宅地等の特例が適用される5つの土地
小規模宅地等の特例が適用される土地には5つの種類があります。
土地の種類ごとに限度面積や相続税の課税価格が減額される割合は異なります。
2-1.特定事業用宅地等
定義 | 相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除く)の用に供されていた宅地等 |
限度面積 | 400㎡ |
減額割合 | 80% |
特定事業用宅地等とは、簡単に言うと事業で利用していた土地です。
ここでいう「事業」から除外されている不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車業やこれに準ずる事業用の土地については、後で説明する「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例が適用されます。
特定事業用宅地等には次の2つの区分があり、小規模宅地等の特例が適用されるための要件が異なります。
被相続人の事業の用に供されていた宅地等
事業承継要件 | その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用に供されていた宅地等
事業承継要件 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
2-2.特定同族会社事業用宅地等
定義 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで一定の法人の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除く)の用に供されていた宅地等 |
限度面積 | 400㎡ |
減額割合 | 80% |
特定同族会社事業用宅地等とは、同族会社の事業に利用されていた土地です。
特定同族会社事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
法人役員要件 | 相続税の申告期限においてその法人の役員であること |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
また、本特例が適用される同族会社とは、相続開始直前において、被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式総数の50%超を有しているものに限られます。
2-3.特定居住用宅地等
定義 | 相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 相続開始の直前において被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等 |
限度面積 | 330㎡ |
減額割合 | 80% |
特定居住用宅地等とは、被相続人が亡くなる直前まで住んでいた宅地または被相続人と同一生計の親族が居住していた宅地のうち、一定の要件を満たす親族が相続によって取得した土地をいいます。
小規模宅地等の特例において、もっとも利用されることが多いと思われるのが、この特定居住用宅地等です。
特定居住用宅地等において小規模宅地等の特例の適用を受けるには、相続した親族の立場ごとに細かい要件が設定されています。
このため、実際に特定居住用宅地等を相続した場合、税理士などの専門家に相談して適用要件を満たすかを十分に確認しておくことをおすすめします。
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等
被相続人の配偶者 | 無条件に適用 |
被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること |
上記以外の親族 | 被相続人に配偶者がいないことなど6つの要件のすべてを満たすことが必要 |
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等
被相続人の配偶者 | 無条件に適用 |
被相続人と生計を一にしていた親族 | 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること |
2-4.貸付事業用宅地等
定義 | 相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業に限る)の用に供されていた宅地等 |
限度面積 | 200㎡ |
減額割合 | 50% |
貸付事業用宅地等にあたる土地は、不動貸付業、駐車場業、自転車駐車業やこれに準ずる事業に利用されていた土地です。
亡くなった人が賃貸アパートの経営など、いわゆる不動産投資を事業として行っていた場合、貸付事業用宅地等の要件を満たせば小規模宅地等の特例の適用を受けられます。
ただし、被相続人が亡くなる3年以内に新たに貸付事業に利用されることとなった土地は適用対象外です。
貸付事業用宅地等については次のとおり、土地の区分ごとに異なる適用要件が定められています。
被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等
事業承継要件 | その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等
事業承継要件 | 相続開始前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を行っていること |
保有継続要件 | その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
2-5.郵便局舎に利用される宅地等
あまり事例は多くありませんが、日本郵便株式会社に貸し付けられている一定の郵便局舎の敷地として利用されている宅地についても、小規模宅地等の特例が適用されます。
3.相続で小規模宅地等の特例を受けるための手続き
相続税について小規模宅地等の特例を受けるためには、まず、相続税申告書に特例を受ける旨を記載する必要があります。
特例の適用を受けるか否かは相続によって土地を取得する者の選択に委ねられています。何もしなくても当然に税務署が特例を適用して相続税を計算してくれる、というわけではないため注意が必要です。
また、特例の適用には小規模宅地等に係る計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど、必要書類を添付する必要があります。
4.まとめ
自宅として利用していた土地だけでなく、不動産投資などの事業用地も一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例の適用を受けられるため、うまく利用すれば非常に大きな節税効果が見込めます。
ただし、上で説明したように小規模宅地等の特例の適用要件は複雑です。 実際に特例の適用を受けられるかは、税理士などの専門家に相談しておくとよいでしょう。