賃貸管理のよくあるトラブル事例3選|対処法も解説
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不動産投資では収益性の高い物件を取得することが重要ですが、それで終わりではありません。
優良物件を手に入れても、賃貸管理がうまくいかなければ十分な収益が上がらないことがあります。
反対に、難のある投資用物件であったとしても、賃貸管理を工夫すれば想定以上の収益を上げることも可能です。
そこで、賃貸管理でよくあるトラブル事例と対処方法について解説します。
- 家賃滞納を防ぐため、最近では家賃保証会社の利用が一般的になっている
- 入居者が起こす近隣トラブルは解決が難しいため注意が必要
- 賃貸管理会社の管理が不十分というトラブルも多い
1.賃貸管理トラブル1:家賃の滞納問題
不動産オーナーにとって非常に頭の痛い問題が、入居者の家賃滞納です。
家賃の滞納が発生した場合、督促前に入居者が気付き、すぐに振り込んでくれるようであれば、それほど気にならないかもしれません。
しかし、家賃滞納が何回も続いている場合や入居者の対応に問題がある場合には、強制退去も視野に入れる必要があるでしょう。
家賃の回収には、賃貸人自身が行う方法と、不動産管理会社に委託する方法の2つの選択肢があります。
注意点としては、不動産管理会社に家賃の回収を委託している場合でも、家賃滞納が発生して入居者との間でトラブルになったときは、入居者との交渉や法的措置を賃貸人自身で行う必要があります。
弁護士法において、紛争事件の交渉等の代理は弁護士しかできないと定められているため、不動産管理会社は賃貸人に代わって入居者と交渉することができないのです。
なお、不動産オーナーが不動産会社に投資用物件をサブリースしている場合、不動産会社自身が入居者との賃貸借契約の当事者となり、不動産会社自身が家賃を滞納している入居者と交渉できます。
2.賃貸管理トラブル2:入居者の問題
不動産賃貸は入居者の存在によって成り立っている以上、入居者が起こすトラブルを避けては通れません。
以下では、入居者が起こすトラブルとしてよくある事例を紹介します。
2-1.入居者どうしの近隣トラブル
賃貸管理で多いのは入居者どうしのトラブルです。
騒音問題は典型的な近隣トラブルの例でしょう。
特に夜勤の入居者と日勤の入居者が混在する物件では、活動する時間帯の違いから騒音のトラブルが発生しやすいのです。
また生活時間帯が異ならなくても、夜間に部屋へ友人を招いて朝まで騒いでいるとか、楽器の演奏や大音量での音楽再生などによって隣人とトラブルになることもあります。
騒音問題は賃貸物件の構造によっても発生する可能性が大きく異なり、一般的に建物が木造の場合は騒音が響きやすいです。
なお、実際には騒音などが発生していないにもかかわらず、精神疾患等によって近隣から騒音などの被害を受けていると誤解し、クレームを入れてくる事例もときどきあります。
このケースでは実際に騒音が発生していないため、解決できる可能性はほとんどないというのが実情です。
いずれにしても騒音問題をはじめとする入居者どうしのトラブルは、感情的なこじれが伴うため解決が難しく、対立している入居者のいずれかが退去するまで継続する可能性が高いといえます。
2-2.共用部の汚損
廊下やエレベーター、エントランスなど共用部分が汚損するトラブルも賃貸管理では比較的よくあります。
例えば、入居者が廊下にゴミを置いたままにしてシミが残るといった事例です。
マンションの敷地内にゴミ集積場がある場合には、ゴミ出しのマナーを守らないというトラブルもあります。
また、繁華街が近いマンションなどで発生しがちなトラブル事例の一つとして、通行人がエントランスなどの敷地内に吐瀉物を残していることがあります。
2-3.利用規約違反
不動産の賃貸借契約では、賃貸物件の利用方法について規約が定められていることがあります。
例えば、ペットの飼育禁止は典型的な利用規約の例です。
しかし、ペット不可物件であるにもかかわらず、規約に反して隠れてペットを飼育しているケースがあります。
また、賃貸借契約の締結時には入居者を申告することが通常ですが、申告を受けていない人がいつのまにか同居していることもあります。
申告していない人の同居に対して厳しく対処するかは、不動産オーナーや管理会社の考え方によって大きく異なり、実際にはそれほど気にしない賃貸人もいるかもしれません。
しかし、女性限定で募集している物件に男性が同居しているとか、単身者限定の物件に家族連れで入居している場合には、他の入居者からのクレームにつながるおそれがあります。
このほか、居住用として賃貸借契約をした物件を会社の本店所在地などとして登記し、事務所として利用しているというケースもあります。
賃貸借契約書や利用規約に居住用であることが明記されている場合には、これも契約違反です。
3.賃貸管理トラブル3:管理会社の問題
賃貸管理では、本来であれば管理をする側である不動産管理会社との間でトラブルが起こることもあります。
不動産管理会社とのトラブルとしてよくある事例は、管理会社が契約で定めた管理業務を行っていないケースです。
例えば、定期的な共用部の清掃を委託しているが、実際に清掃をした形跡がないといったものです。
このほか、入居者から室内の不具合について修繕の依頼があっても対応していないこともあります。
共用部や室内(専用部)についての建物管理を管理会社に委託しているにもかかわらず、十分に対応されていない場合には、入居者からのクレームにつながることがあります。
退去者が発生する可能性も高まるため、不動産投資の収支にも影響するのです。
4.賃貸管理トラブルへの対処方法
このような賃貸管理のトラブルを完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、不動産オーナーの工夫次第ではトラブルの発生を少なくできます。
そこで、トラブルへの対処方法について説明します。
4-1.家賃滞納への対処方法
不動産投資の収支に直結する家賃滞納に関しては、できるだけ発生させないという事前の対処とともに、発生した場合に不動産投資の赤字をできるだけ抑えるという事後的な対処も考えておくとよいでしょう。
事前の対処としては、入居審査が重要です。
賃貸借契約を締結した後は、不動産オーナーの都合によって契約を解除することは簡単なことではありません。
よく知られているように、家賃の滞納が発生した場合でも、おおむね3ヶ月分以上の滞納が発生していないと裁判所は契約解除による退去を認めません。
したがって、賃貸借契約を締結する前に、契約してよい入居希望者か否かを十分に検討することが大切です。
もっとも、不動産オーナーとしては不安要素のある入居希望者であっても、空室が続いていると判断が鈍って入居させてしまいがちです。
このため、あらかじめ審査の項目や基準を決めておくのもよいでしょう。
ただし、入居審査の難しいところは「勤続年数が短い」とか「年収が低い」など客観的には不安要素がある人であっても、本人が誠実であれば家賃滞納やその他のトラブルは発生しにくく、一方で「大手企業勤務」など客観的には安心と思われる人であっても、本人の人柄次第ではトラブルが発生しないとは言い切れないところです。
入居審査に自信がなければ、不動産管理会社に賃貸人の募集も委託するというのも一つの選択肢です。
また、家賃滞納の事後的な対処方法としては、家賃保証会社の利用を検討する必要があるでしょう。
従来は家賃の支払いを担保するために連帯保証人を用意することが一般的でした。
しかし、実際には家賃滞納が発生して連帯保証人へ連絡しても連絡が取れないことや、連帯保証人に支払い能力がないことがよくあります。
このため、都心部の賃貸物件を中心に家賃保証会社を利用することが一般的になってきました。
家賃保証とは、賃借人が家賃を滞納した場合、賃貸人へ家賃を立て替え払いする仕組みです。
家賃保証会社はこの対価として、賃借人から保証料を得ています。
家賃保証会社が滞納した家賃を立て替えた後は、家賃保証会社が賃借人に家賃を請求する権利を持ちます。
前述したとおり、不動産管理会社が家賃の回収をしているケースでは、管理会社が入居者から滞納家賃を取り立てることは弁護士法に抵触します。
しかし、家賃保証会社が立て替え払いをした後、入居者に対して立替分を請求することは弁護士法には抵触しません。
なぜなら、立て替え払いによって家賃保証会社が賃貸人の賃借人に有していた請求権を持つことになり、自己の請求権を行使するに過ぎないためです。
家賃保証会社を利用すれば、家賃の支払いを受けられないリスクを回避でき、また家賃の回収や退去にかかる面倒な法的手続きは家賃保証会社にやってもらえるのです。
4-2.入居者の問題への対処方法
入居者が引き起こす賃貸管理上のトラブルに関しては、完全な回避が難しいのが実情です。ただし、一般論としては、入居者の属性によってトラブルが発生しやすいかそうでないかが変わります。
したがって、ここでも入居時の審査が重要といえます。
また、起こりやすいトラブルについては、利用規約に具体的に定めておくことも大切です。
入居者トラブルの解決については管理会社の手腕にも左右されます。 このため、不動産管理会社に管理を委託する場合には、管理会社の解決能力もよく把握しておいた方がよいでしょう。
4-3.管理会社の問題への対処方法
不動産管理会社とのトラブルについては、賃貸人自身でときどき物件を巡回し、定期清掃などが十分になされているか抜き打ちチェックなどをする必要があるでしょう。
不動産管理会社と契約を締結する際、定期的に管理業務の内容について報告を受けられるようにしておくことも大切です。
入居者からのクレームが発生しているとか、清掃業務などを契約どおりに実行していないといった問題が実際に起きているのであれば、不動産管理会社の変更も検討すべきでしょう。
それだけ、賃貸管理において不動産管理会社が果たすべき役割は重いのです。
5.まとめ
不動産投資は有価証券への投資とは異なり、取得後に賃貸管理が必要となります。
そこでは、入居者どうしのトラブルなど解決に時間のかかる問題なども発生します。
この種のトラブルへの対応が苦手な場合や副業としての不動産投資のため時間をさけない場合などでは、実物不動産ではなく、不動産ファンドなど証券化された不動産への投資のほうが合っているかもしれません。
不動産ファンドなどへの投資では、面倒な不動産の賃貸管理はすべて運用会社が行うため、不動産投資家は出資をするだけで済みます。
不動産投資では実物の不動産を取得して行う方法以外にもさまざまな投資手法が存在するため、自分に合った投資を選択することが大切です。