不動産経営の利益を最大化するプロパティマネジメントとは何か?

 

この記事の目次

不動産投資においては、不動産を取得した後の不動産管理が収益を左右します。

コスト削減のために投資用不動産の所有物件数が少ないうちは自主管理するオーナーもいます。

しかし、マンション一棟を保有しているケースなど投資用不動産が増えると自主管理が難しく、不動産管理会社に外注せざるを得なくなることが多いでしょう。

不動産管理会社といっても業務内容はさまざまです。

例えば、建物管理(ビルマネジメント)だけを行う管理会社もあれば、入居者募集などを含めたプロパティマネジメントまで行う管理会社もあります。

不動産投資家としては、自分のニーズに合致した不動産管理会社を選択することが大切です。

そこで今回は、特に複数の投資用不動産を保有している場合に、不動産経営による収益を最大化するために欠かせない存在である「プロパティマネジメント」について、詳しく説明します。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • プロパティマネジメントとは、不動産の管理・運営を行うこと
  • 建物管理(ビルマネジメント)は、どの不動産管理会社も最低限行う業務
  • 入居者募集(リーシングマネジメント)は、プロパティマネジメント会社の中核業務

1.プロパティマネジメントとは

「プロパティマネジメント」とは不動産オーナーの不動産(収益不動産)の管理・運営を行うことです。

英語表記であるProperty Managementの頭文字をとってPMと呼ばれることもあります。

プロパティマネジメント業務を行う不動産管理会社を「プロパティマネジメント会社」といいます。

投資用不動産の管理だけにとどまらず、不動産投資の収益を最大化する役割を担うのがプロパティマネジメントです。

このため、プロパティマネジメント会社には建物に関する知識だけでなく、中長期に及ぶ収支計画を立案する能力が求められます。

不動産投資といっても、投資対象や投資規模はさまざまです。

区分マンションのワンルームを一部屋だけ所有している不動産投資家もいれば、複数のエリアに多数の不動産を所有している投資家やマンション一棟を所有している投資家もいます。

プロパティマネジメント会社を活用するのは主に、マンション一棟を所有している不動産投資家でしょう。

マンション一棟を所有している場合、各部屋の管理だけでなく建物全体についての管理が必要となるためです。

例えば、将来的な大規模修繕や共用部分の管理におけるコスト削減など、不動産投資において検討しなければならない事項は多岐にわたります。

そのため、不動産管理のプロであるプロパティマネジメント会社に委託することが多いのです。

2.プロパティマネジメントの業務

プロパティマネジメント会社が行う業務には、大きくわけて次の3種類があります。

  1. 建物管理(日常的な建物管理、コンストラクションマネジメント)
  2. 入居者の募集
  3. 入居者への対応

建物管理(ビルディングマネジメント)

プロパティマネジメント会社も不動産管理会社の一形態のため、建物管理に関わる業務を行います。

建物管理に関する業務を、後で説明する入居者への対応と区別して「ビルディングマネジメント(BM)」と呼ぶことがあります。

建物管理の業務内容は主に日常的な建物管理業務や、中長期で計画する修繕工事にかかわるコンストラクションマネジメントなどです。

日常的な建物管理業務

不動産管理において日常の建物管理は最低限必要となる業務です。

プロパティマネジメント会社ではない一般の不動産管理会社は建物管理だけを行っていることもあります。

建物管理業務では日常的な巡回点検、法定点検・自主点検、清掃、修繕など建物の物理的な管理を行います。

日常の建物管理が充実していると、建物の美観を維持して経年劣化を遅らせることも可能でしょう。

また、入居者や内見者の満足度を高めるため、結果的に不動産投資の収益を向上させることにもつながります。

コンストラクションマネジメント

大規模マンションの管理組合がプロパティマネジメント会社に管理を依頼する場合に、中長期の大規模修繕の計画立案や実施に関与する「コンストラクションマネジメント」まで委託することがあります。

大規模修繕などを行う際、施工品質やコストの管理などを一括して行う必要があります。

しかし、大規模修繕はそれほど頻繁にあることではないため、一般の不動産投資家はそのノウハウを有しないことが通常です。

このような場合でも、プロパティマネジメント会社へコンストラクションマネジメントを依頼することで、大規模修繕を適切に遂行することが可能となります。

入居者募集(リーシングマネジメント)

プロパティマネジメント会社の中核的な業務として、入居者やテナントの募集、賃貸借契約の締結など募集に関わる業務があり、この業務を「リーシングマネジメント(LM)」とも呼びます。

実際の入居者募集については、プロパティマネジメント会社自身が直接行うのではなく、他の不動産仲介会社に委託することもあります。

入居者の募集は、投資用不動産の収益を左右する非常に重要な業務です。

空室が長期化すると不動産投資の収益は赤字になるためです。

したがって、入居者募集のための広告媒体の選定や賃料設定など入居者募集のノウハウがあるプロパティマネジメント会社は選好されやすいでしょう。

入居者募集の能力を左右するのは、不動産の所在するエリアの相場や居住者層や人気度などに関する知識です。

このため、同じエリアで長年の営業実績があることや社内にノウハウが蓄積されている会社の方が安心でしょう。

入居者への対応

賃貸借契約締結後の入居者への対応もまた、プロパティマネジメント会社が担う重要な業務の一つです。

具体的には、入居者からの賃料回収、クレームへの対応や、退去時の明け渡しに関する手続きなどがあります。

賃料の回収だけでなく、不動産投資家に代わって物件全体の予算計画の策定や予実管理を行うプロパティマネジメント会社もあります。

日常の建物管理に加えて、このような入居者への対応を不動産管理会社に委託するか否かは不動産投資家によって異なるところです。

区分マンションの一部屋だけを所有しているようなケースでは必要な管理業務はそれほど多くないため、入居者への対応は投資家自身が行うことも比較的多いでしょう。

入居者への対応を含めて管理会社に委託したいという場合には、建物管理だけでなくプロパティマネジメント業務のできる管理会社を選ぶ必要があります。

3.アセットマネジメント(AM)との違い

プロパティマネジメントと似た概念として「アセットマネジメント(AM)」という用語を聞いたことがあるかもしれません。

アセットマネジメントとは、不動産投資家に代わって投資用不動産のポートフォリオ全体の管理や運用を行うことです。

このような業務を担う会社を「アセットマネジメント会社」と呼びます。

アセットマネジメント会社は運用中の不動産管理だけでなく、物件売却のような出口戦略にも関わることがあります。

より投資家に近く俯瞰的な立場で不動産投資に関わっているのです。

これに対し、プロパティマネジメント会社は、投資家やアセットマネジメント会社が決定した方針に従って、投資家のポートフォリオに含まれる個別不動産の管理を行う立場です。

ごく簡単にいうと、アセットマネジメントは投資家寄り、プロパティマネジメントは物件寄りの業務になります。

不動産投資家がアセットマネジメント会社に委託する必要があるのは、投資ファンドを通じた不動産投資においてファンドが委託するケースや、複数の実物不動産に手広く投資をしているケースなどでしょう。

投資ファンドであるGK-TKスキームやTMK、REITなどにおいては、一般の投資家は投資ファンドに対して出資し、投資ファンドがアセットマネジメント会社に実際の管理・運用業務の一切を委託します。

このような手法で不動産投資をしているのは、大手企業やごくわずかな富裕層です。

このため、一般の不動産投資家にとってアセットマネジメント会社が必要となることは基本的にありません。

不動産管理を外部に委託するのであれば、プロパティマネジメント会社かビルマネジメント会社ということになるでしょう。

4.まとめ

実物の不動産を購入して不動産投資をする場合、不動産管理は大切なポイントです。

不動産管理会社の業務は、入居者募集以外は厳しい宅建業法の規制の対象外です。

このような事情もあり、不動産管理会社は業務内容や能力に大きな幅があるといわれてきました。

このため管理会社に委託する場合、候補となる管理会社をよく調べてから選定することが大切です。

また、委託する業務が増えるほど委託料は増加するため、投資家が必要と考える業務に限定して委託することも重要です。

不動産投資は物件を取得すれば自動的に収益を生むようなものではなく、購入してからの管理業務がそれなりの負担となることもあります。

その意味では、純粋な投資である株式投資などとは少し異なる側面があります。

不動産管理にあまり手間をかけられない方や時間的余裕がない方は、実物の不動産ではなく不動産投資ファンドに出資した方がニーズに合致していることもあるでしょう。

不動産ファンドへの投資であれば、不動産管理をファンド運営会社が行うため、投資家は資金を拠出する以外は何もしなくても不動産からの収益の分配を受けることができます。

このように実物不動産への投資は、向き不向きが大きく分かれる投資です。

投資をするかを迷っている場合には、不動産ファンドへの投資など様々な選択肢を比較検討してみるとよいでしょう。

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