地番と住居表示の違いとは?
この記事の目次
不動産取引をする際に「地番」という用語を目にすることがあります。
一見すると地番は住所のように見えますが、いわゆる住所であるところの「住居表示」と「地番」は異なることが多いです。
不動産取引においては地番を利用する場面も多く、例えば不動産の登記簿を閲覧したい場合に地番が必要となります。
そこで、地番と住居表示のそれぞれの意味や違い、住居表示しかわからない場合にどうやって地番を調べるかについて説明します。
- 地番とは、不動産登記において一筆の土地ごとに付されている番号
- 住居表示とは、郵便物の差し出しなどの目的で使われる住所の表示
- 住居表示から地番を調べるときはブルーマップを利用することが多い
1.地番と住居表示の意味
地番と住居表示には、それぞれどのような意味があるのでしょうか。
地番と住居表示の目的の違いや地番と別に住居表示が取り入れられた経緯について説明します。
1-1.地番とは
「地番」とは不動産登記において一筆の土地ごとに付されている番号をいいます。
「筆」は不動産登記における土地の数え方の単位です。
地番の付されている土地
明治時代に国が土地を整理して公図を作成しました。
土地は所有権の対象となるだけでなく課税の対象でもあるため、正確に所在や境界などを把握する必要があったのです。 そのとき1筆の土地ごとに1つの地番が付されました。
地番は所有権の対象となるすべての土地に付されたため、宅地だけでなく農地や山林などにも所有権の対象であれば地番があります。
これに対し、国有地には地番が付されていないことがあります。
不動産登記における地番
不動産登記簿(全部事項証明書)の表題部に地番が記載されます。
例えば、次の登記簿の見本に記載されている「特別区南都町一丁目101番」が地番となります。
出典:法務省HP
公図における地番
不動産登記簿とは別に、法務局には近隣エリアとの土地の区画を明確にし、地番を表示した「公図」が登録されています。
この公図にも地番が記載されています。
以下の図に記載された数字が地番です。
出典:盛岡地方法務局HP
地積測量図における地番
物理的に一つの土地として利用されているようにみえても、土地が複数にわかれていることがよくあります。
このため、不動産取引では土地の境界を正確に確認する必要があります。
土地の不動産登記簿は1筆ごとに編成されるため、2筆以上にわかれた土地の権利関係を確認する際には、取引に関わるすべての不動産登記簿を確認しなければなりません。
また、取引の対象となる土地のどこが土地の境界であるかを厳密に把握するため、法務局で「地積測量図」を入手します。
地積測量図には1筆の土地の測量結果が詳細に記載されています。
なお、地積測量図はすべての土地について存在するとは限りません。
出典:盛岡地方法務局HP
分筆と合筆
このように、地番は不動産登記簿を編成する単位であり、所有権等の土地にまつわる権利や課税の対象となります。
このため不動産取引においては地番を利用する場面が多いでしょう。
ただし、相続や売買などで地番の付された土地が分割されることがあります。
これを「分筆」と呼び、分けられた土地にそれぞれ新しい地番が付されるのです。 土地を分筆した場合の地番には枝番号が付されます。
例えば地番が「1番」の土地が2つの土地に分筆されると、新しい土地の地番は「1番1」と「1番2」となるのです。
反対に、2筆以上の土地を合体させて一つの土地とする「合筆」が行われることがあります。
合筆の場合では、もとの土地の地番のうち、若い番号の地番が合筆後の地番です。
例えば「1番1」と「1番2」の土地を合筆すると、合筆後の土地の地番は「1番1」となります。
1-2.住居表示とは
「住居表示」とは郵便物の差し出しなどの目的で使われる住所の表示をいいます。
日常的に人の居住地を特定するために使われる「住所」が住居表示です。
また、住民票などに記載されるのも住居表示です。
もともと、明治時代以降、日本では地番が住所として利用されていました。
しかし、国土の開発が進むにつれて、次第に道路と町名の境界が一致していないことや、同一地番の土地上に複数の建物が建ち異なる人が住んでいることなどが増加しました。
このような状況によって、郵便物の配達などに支障を生じるようになったのです。
そこで、昭和37年に住居表示に関する法律が制定され、地番とは別に住居を特定するために住居表示が実施されることになりました。
現在では都市部の多くの地域で住居表示が実施されています。
もっとも、地域によっては今でも地番が住所として利用されていることがあります。
住居表示が実施されていない地域において、宅地開発などに伴い新たに住居表示を行いたい場合には、建物の建築後に市町村役場に申請が必要です。
2.地番と住居表示の違い
地番と住居表示の大きな違いは利用目的にあるでしょう。
すなわち、地番は登記や納税のため対象となる土地を特定することが目的であるのに対し、住居表示は人の居所や住所となる建物を特定することが目的といえます。
3.地番と住居表示の調査方法
不動産取引の場面においては、取引対象となる土地の地番を把握することが必要です。
例えば土地の調査を行うとき、法務局で不動産登記簿謄本等を取得する際には住居表示ではなく地番が必要となります。
このため、住居表示が実施されているエリアで地番と住居表示が異なる場合には、まず地番を調査する必要があります。
なお、実際の不動産取引では土地所有者などに地番を聞くことで把握することも多いでしょう。
3-1.ブルーマップ
住居表示から地番を調査する方法として一番有名なのが「ブルーマップ」です。
ブルーマップとは、通常の住居表示が記載された住宅地図の上に公図に基づく境界や公図番号、地番をブルーで記入した地図です。
株式会社ゼンリンが作成、販売しています。
出典:株式会社ゼンリンHP
ブルーマップを使えば、住居表示から簡単に地番を調べることができます。
しかしながら、ブルーマップは市区町村ごとに作成されており、1冊あたり数万円するため、購入することは現実的ではありません。
ブルーマップは各地の法務局に備え付けられているため、不動産の所在地を管轄する法務局に出向いて閲覧すれば足りることがほとんどでしょう。
また、地域の図書館などにも置いてあることがあります。
ただし、ブルーマップが作成されていない地域もあります。
基本的には住宅のあるエリアについて作成されているため、山林や農地などの地番はブルーマップでは調べられないことが多いでしょう。
ブルーマップで調べられない場合には、次に説明する方法で地番を調査することになります。
3-2.法務局への問い合わせ
土地の住居表示がわかっている場合には、その不動産の所在地を管轄する法務局に電話又は訪問して地番を教えてもらう方法もあります。
ただし、不動産のある場所がはっきりわかっていない場合や不動産の数が多い場合には難しいでしょう。
3-3.登記情報提供サービスで検索
「登記情報提供サービス」とは一般財団法人民事法務協会が運営しているWEBサイトです。
オンラインで法務局に登録されている登記情報を取得できます。
登記情報提供サービスの利用自体は有料ですが、このサービスを通じて取得する登記情報を指定する際に、地図から地番を特定する検索システムが無料で利用できます。
3-4.固定資産税課税明細書
地番を調べる人が土地の共有持分を持っているような場合もあるでしょう。
売却したいが自分の所有している不動産の地番がわからない、という土地所有者もいます。
このような土地に対する権利を持っている人の場合、土地の「固定資産税課税明細書」で地番を知ることができます。
固定資産税課税明細書は、土地所有者(共有持分権者を含む)に対して毎年送付される書類です。
出典:新座市HP
市町村によって様式は多少異なりますが、固定資産税課税明細書のなかで土地の所在地が記載されています。
この土地の所在地が地番となります。
3-5.登記識別情報通知書
土地所有者や共有持分を持っている人であれば、所有権移転登記をしたときに法務局から登記識別情報通知書が送られてきているはずです。
この登記識別情報通知書の中にも地番が記載されています。
登記識別情報とは、アラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号であり、従前の登記済証(権利証)に代わるものです。
なお、登記識別情報は紛失すると再発行はできません。
不動産の売却などのため登記識別情報が必要となった場合には、司法書士に依頼して本人確認情報という書類を作成してもらう必要があります。
4.まとめ
地番は不動産取引をしない限り、日常で使う場面はほとんどありません。
このため、地番と住居表示の違いは不動産業に関わっていないとよくわからないことが多いでしょう。
重要なのは、地番と住居表示は違うものであるということの理解です。
そのうえで住居表示から地番を調べる方法があることを知っておけば、不動産取引で困ることはそれほどないでしょう。
不動産投資のため不動産を購入する場面では、不動産に関する知識が必要になります。
不動産そのものに興味がある場合には、こういった勉強は非常に興味深いと思われます。
しかし、不動産に関する勉強にはそれほど興味がなく、あくまでも余剰資金の運用先を探しているという方にとっては、実物の不動産を購入して投資をするよりも、不動産投資ファンドに出資をしたほうが効率のよいこともあります。
不動産投資にはさまざまな方法がありますので、自分に合った投資方法を探すことが大切です。