不動産会社による仲介と買い取りの違いとは?

 

この記事の目次

自宅や相続した不動産などを売却する際、不動産会社に売却手続きを依頼することが一般的です。

通常は不動産会社に仲介を依頼して不動産の購入希望者を見つけてもらいますが、最近では不動産会社が買い取りをするというケースも増えてきました。

売主からすると不動産会社に依頼して不動産を売却するという点では同じですが、仲介と買い取りには売却手続きに違いもあります。

そこで、不動産の売却における仲介と買い取りの違いや、それぞれのメリットとデメリットについて解説します。

10秒でわかるこの記事のポイント
  • 仲介では、不動産会社は売買契約の当事者とならない
  • 買い取りでは、不動産会社が売買契約の当事者となる
  • 早急に不動産を現金化したいときは買い取りの方が適していることがある

1.不動産の仲介

個人で不動産を売却するときは、不動産会社に仲介を依頼することが一般的です。

以下では、仲介となる不動産会社がどのような立場であるか、仲介の種類などの基本的な事項を説明します。

1-1.不動産の仲介とは

不動産の仲介は宅地建物取引業法上「媒介」と呼ばれる業務にあたります。

仲介(媒介)とは、売主から不動産売却を依頼された不動産会社が買主との間で売買契約を成立させる仲立ちをすることをいいます。

ここでのポイントは、不動産売買契約の当事者はあくまでも売主と買主であり、仲介業者は売買契約の当事者とならないという点です。

1-2.仲介における不動産会社の活動

仲介を依頼された不動産会社の活動の一例は以下の図のとおりです。

売主に不動産売却の仲介を依頼されると、売主と不動産会社の間で媒介契約を締結します。

その後、不動産会社はレインズやインターネットへの不動産売出情報の掲載や、独自の人脈を活用することにより買主を探し、購入希望者へ内覧や現地の案内などを行います。

購入希望者が買付け申込みを正式に出し、不動産会社が売主に相談のうえ売渡承諾を購入希望者に出したら、売買契約に向けて条件交渉です。

売主と購入希望者の間で売買価格などの条件が合意に達すると、不動産会社が売買契約書や重要事項説明書などを用意し、契約から不動産の引き渡しまでの段取りを行います。

売主が個人の場合には、不動産会社に仲介を依頼するとほとんどの手続きを主導的に進めてくれるため安心です。

1-3.不動産の仲介の種類

不動産売却の仲介を依頼する場合には、売主と不動産会社との間で「媒介契約」を締結します。

この媒介契約には、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があり、それぞれの内容について宅地建物取引業法では以下のルールが定められています。

  一般媒介 専任媒介 専属専任媒介
他の不動産会社への重複依頼 × ×
売主が自分で買主を探す ×
売主への報告 報告義務なし 最低2週間に1回 最低2週間に1回
レインズへの登録 登録義務なし 7日以内 5日以内
契約期間 なし 3か月 3か月

一般媒介の場合は複数の不動産会社に同時に依頼できるため、とにかく早く不動産を売却したいという方には一般媒介が適していることがあります。

ただし、仲介をする不動産会社の心情としては、専属専任や専任媒介で依頼を受けた顧客と比べて優先順位が下がることがあります。このため、売りにくい不動産の場合には一般媒介だとかえって売却に結びつかないというリスクもあるのです。

一般論として不動産会社は、自社だけに売却活動を任せてもらえる専属専任媒介を好みます。

信頼できる不動産会社があって、なおかつ急いで売却する必要がない場合には、専属専任媒介でもよいでしょう。

2.不動産の買い取り

これに対して、不動産会社自身が不動産の買主となるのが「買い取り」です。

不動産の仲介と異なるのは、不動産会社が売買契約の当事者となる点にあります。

不動産会社が買主となる場合、仲介と比べると購入希望者の募集や案内などの業務が不要となるため、不動産の売却が比較的早く進む可能性があります。

最近では、不動産の仲介だけでなく自社での買い取りを提案する不動産会社も増えてきました。 買い取りを行う不動産会社は通常、リノベーションなどで価値を向上させてから買い取った住居などを転売します。

3.不動産仲介と買い取りの比較

不動産の仲介と買い取りにはそれぞれ、メリットとデメリットがあります。

不動産を売却するときには、仲介と買い取りのどちらが自分に合っているかを十分に検討する必要があります。

3-1.不動産仲介のメリット

不動産会社に仲介を依頼するメリットは以下のとおりです。

売買価格が自由に設定できる

不動産会社に仲介を依頼する場合には、売買価格を売主が自由に設定できます。

相場より高い価格設定だと買い手がつきにくいものの、急いで売却する必要がなければ希望の価格で買ってくれる人が現れるまで待つこともできます。

契約相手を選べる

不動産の仲介であれば、売主が買主を選ぶことができます。

思い入れのある不動産で、自分のイメージにあった人に不動産を譲りたいという希望がある場合などでは、仲介のほうがよいでしょう。

3-2.不動産仲介のデメリット

不動産の仲介を依頼することには、メリットだけでなくデメリットもあります。

内覧対応が面倒

現在住んでいる自宅の売却について仲介を依頼すると、購入希望者があらわれるたびに内覧があります。

内覧がある日には、在宅して購入希望者を案内する必要があります。その都度、部屋の掃除なども必要になるでしょう。

購入希望者がすぐに不動産を買ってくれるとは限らないため、通常は売却できるまでに複数回このような内覧対応が必要となります。

売主が忙しい場合やお子さんがいて休日に内覧の予定を合わせることが大変という場合には、一般的な仲介だと面倒に感じることが多いかもしれません。

売却活動を周囲に知られる

自宅の売却について不動産会社に仲介を依頼すると、インターネットなどの広告に掲載されることがあります。

詳細な住所やマンションの部屋番号まで広告に記載されなかったとしても、外観写真などから近隣住民や知人には家を売ろうとしていることを知られる可能性があります。

売れるまでに時間がかかることも

仲介の場合には、購入希望者が現れるまで待つ必要があります。

また、上でも説明したように、買い取りでは不要となる買主を募集するための業務が必要なため、売却にこぎつけるまでに時間がかかる傾向にあります。

3-3.不動産買い取りのメリット

不動産会社に買い取りを依頼するメリットは次のとおりです。

売却に時間がかからない

仲介と比較すると、買主を募集する必要がないのでその分売却までの時間を短縮できます。

このため、早めに売却して現金化したいというケースでは、買い取りの方がよいことがあります。

支払いが確実に行われる

不動産会社による買い取りでは、その不動産会社から直接売買代金が支払われます。

個人に売却することと比べると支払いが滞るリスクは低いため安心感があります。

契約不適合責任を免責しやすい

中古の不動産売買で売主が注意しなければならないのは、不動産を引き渡した後に物件に不具合があったことが判明すると、買主から契約不適合責任を問われる可能性があることです。

契約不適合責任は従来の「瑕疵担保責任」に相当するもので、買主から不具合のあった箇所の修理や契約解除、損害賠償などを求められることがあります。

とくに築古の一戸建て住宅やマンションなどでは配管などが劣化していることが多く、後からトラブルが起きるリスクも高いでしょう。

契約不適合責任は、個人が売主であれば不動産売買契約に免責条項を定めることで、後から買主に責任追及されることを回避できます。

ただし、買主が個人の場合には免責条項に同意を得られない可能性があります。

これに対し、買主が不動産会社であればプロであるため、契約不適合責任の免責に同意を得やすい傾向にあるのです。

3-4.不動産買い取りのデメリット

不動産会社は買い取り後にリノベーションをして転売することを予定しています。

このため、不動産買い取りのデメリットとして買い取り価格が相場より低くなりやすいという点が挙げられます。

一般的な買い取り価格は相場の7〜8割程度です。

したがって、不動産会社の提示した買い取り価格と相場をよく比較したうえで売却することをおすすめします。

4.まとめ

不動産を売却するときの選択肢として、不動産会社に仲介を依頼するケースと買い取りを依頼するケースを比較して説明しました。

重要なことは、仲介と買い取りのいずれもメリットとデメリットがあり、どちらが良いかは一概にいえないということです。

売主が不動産の現金化を急いでいる場合には、売却が早く進みやすい買い取りは有効な選択肢となるでしょう。

一方、売買価格その他買主に対する希望条件がはっきりしていて、売却を急いでいないという場合には、不動産の仲介を依頼したほうが満足できる売却につながる可能性が高いといえます。

したがって、不動産を売却する目的を整理して、仲介と買い取りのいずれを選択するか決定するとよいでしょう。


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