不動産投資における返済比率とは?仕組みや目安額についてお伝えします
この記事の目次
不動産投資において重視したい指標のひとつに『返済比率』があります。
返済比率は家賃収入に対して返済額が占める割合のことで、物件の購入時のみならず、出口戦略を考える上でも重要な数値です。
今回の記事では不動産投資における返済比率の仕組みや目安額、また返済額を低く抑えるためのコツについてまとめてみました。
1.そもそも返済比率とは
不動産投資における返済比率とは、家賃収入に対して返済額が占める割合のことです。
返済比率は不動産経営の安全度を示す指標のひとつとされ、比率が低ければ低いほど返済が滞るリスクを低減できます。
どんなに利回りがよい物件を購入できたとしても、返済比率が高ければ当該不動産は赤字経営となる可能性が高くなるでしょう。
そのため、投資用物件を購入する前に家賃収入や経費、ローンの返済額を含めたシミュレーションを行い、収支バランスが適正であるかどうかを判断することが大切です。
1-1.返済比率の求め方
返済比率は、以下の計算式にもよって求められます。
不動産投資用ローンの毎月の返済額÷家賃収入(満室時)=返済比率(%)
この際、家賃収入は満室時とする点に注意しましょう。
なお、返済比率の計算時にはローン返済額が必要ですが、物件購入以前ではローンの返済期間や金利も確定していません。
そのため、各金融機関が提供しているシミュレーターなどを利用し、毎月のローン返済額を求める必要があります。
また、上記の式では賃料下落リスクや空室リスクをはじめとしたリスク要因も考慮されていません。
そのため、金融機関への返済額をシミュレーションすることはもちろん、想定し得るさまざまなリスクを見込んで計算をするように心がけるとよいでしょう。
2.返済比率は50%以下が目安
返済比率の概要について理解したところで、返済比率はどの程度が理想なのでしょうか。
各投資家の資産状況や投資目的、投資用物件の種類によって適正とされる返済比率に差はあるものの、一般的に安全とされる返済比率は50%とされます。
また、実際には金融機関へのローン返済以外にもさまざまな費用が必要です。
代表的なものとして、修繕費用や管理費などの経費が該当します。
それらに支払う費用を貯めていくうえでも、返済比率は50%以下に抑えるようにしましょう。
3.返済比率の高低が毎月の収入に与える影響
ここでは返済比率別に、返済比率の高低が手元に残る現金に与える影響をシミュレーションしてみましょう。
【共通条件】
満室時家賃収入:50万円 空室率:15% 経費:20%
3-1.返済比率が50%の場合
月々の満室時の家賃収入 | 50万円 |
経費(家賃の20%と想定) | 10万円 |
想定される空室リスク(家賃収入の15%) | 7.5万円 |
月々のローン返済額 | 25万円 |
手残り | 7.5万円 |
返済比率が50%であれば、手残りが7.5万円となります。
ただし、実際にはこれ以外にも修繕費や管理費、固定資産税などが生じるため、経費分についても考慮が必要です。
とはいえ、返済比率が50%であれば手元にじゅうぶんな収益を残せているといえるでしょう。
3-2.返済比率が40%の場合
月々の満室時の家賃収入 | 50万円 |
経費(家賃の20%と想定) | 10万円 |
想定される空室リスク(家賃収入の15%) | 7.5万円 |
月々のローン返済額 | 20万円 |
手残り | 12.5万円 |
返済比率を40%とすると、50%に比べ残額が毎月5万円増加します。
この程度の手残りがあれば、突発的な修繕が生じたり、相次いで空室が発生したりしてもキャッシュフローが赤字とならずに済むでしょう。
とはいえ、一般的に返済比率が40%の物件はそう出回っておらず、実現することはなかなか難しくなります。
3-3.返済比率が60%の場合
月々の満室時の家賃収入 | 50万円 |
経費(家賃の20%と想定) | 10万円 |
想定される空室リスク(家賃収入の15%) | 7.5万円 |
月々のローン返済額 | 30万円 |
手残り | 2.5万円 |
返済比率が60%になると、毎月の残額が2.5万円にまで減ってしまいます。
残額がここまで少ないと、いざというときに極めて危険な状態に陥ることは確かでしょう。
4.返済比率が高いことによるデメリット
返済比率別のシミュレーションを見てきましたが、返済比率が高いことによるデメリットとして以下の項目が挙げられます。
- 想定外の出費に対応できない
- 空室リスクで赤字になる恐れがある
- 金利上昇リスクに対応できない
それぞれについて、見ていきましょう。
4-1.想定外の出費に対応できない
不動産投資は現物資産です。
そのため、経年劣化によって修繕が必要になることはもちろん、水漏れや空調機器のトラブルなどにより予期せぬ費用が生じることも少なくありません。
特に一棟買い投資の場合には、各戸ごとの修繕だけでなく建物全体のメンテナンスも必要となり、修繕管理費が高くなる傾向にあります。
返済比率が高く、手残り残額が少ない場合においては、そうした想定外の出費に対応することが難しくなってしまうでしょう。
4-2.空室リスクで赤字になる恐れがある
不動産投資において、常に空室リスクがつきまとうことを念頭に置いておく必要があります。
先に述べたシミュレーションでも15%の空室率を見込んで計算をしていますが、そこから更に空室が相次ぐ可能性もゼロではありません。
返済比率が高いと、想定以上の空室が生じた際に対処できない可能性が高くなるでしょう。
最悪の場合、資金がショートし、返済が滞ってしまう恐れがあります。
4-3.金利上昇リスクに対応できない
借入期間中に金利が変動しない『全期間固定金利』で住宅ローンを組んでいない限り、金利上昇による影響を受ける場合があります。
日本では低金利政策が長く続いているため、変動金利による恩恵を受けている人も多いかもしれません。
とはいえ、今後の景気変動によっては金利が上昇する可能性があり、返済比率が高い場合には金利上昇リスクに耐えられない恐れが高いでしょう。
5.返済比率を下げる方法
ここでは、返済比率を下げる方法を4つご紹介します。
なお、お伝えする方法は次の通りです。
- 自己資金を投入する
- 繰上げ返済をする
- 返済期間を長く設定する
- 金利を抑える
5-1.自己資金を投入する
物件購入時にいくらかの自己資金を頭金に回す方もいるでしょう。
ここで、なるべく多くの自己資金を投入することで融資額を減らすといった方法があります。
融資額を下げることで、それに伴う金利も減ることから月々のローン返済額を抑えられるでしょう(=返済比率も下がる)。
とはいえ、不動産投資では先にも述べたように突発的な出費(修繕・補修費など)が生じる恐れがあるため、自己資金を投入しすぎないように注意しましょう。
5-2.繰上げ返済をする
頭金の増額とあわせ、繰上げ返済も自己資金投入のひとつです。
繰上げ返済とは毎月の返済額に上乗せして返済することで、『期間短縮型』と『返済額軽減型』の2パターンがあります。
このうち、返済額軽減型では毎月の返済額が引き下がるため、結果として返済比率を下げられるでしょう。 とはいえ、繰上げ返済には一定の手数料が生じることが多いため、繰上げ返済前に確認しておくことをおすすめします。
5-3.返済期間を長く設定する
できるだけ返済期間(融資期間)を伸ばすことで、返済比率を下げる方法です。
とはいえ、返済期間はローン組成時に金融機関が物件購入価値を評価したうえで算出したものであり、必ずしも期間を伸ばせるとは限りません。
そのため、どうしても返済期間を変更したい場合には借り換えを検討するようにしましょう。
5-4.金利を抑える
金利を抑えることで、返済比率を下げられます。
不動産投資用ローンの金利は各金融機関によって異なるため、事前に比較検討したうえで申し込むように心がけましょう。
また、返済期間の延長と同様に、運用後に借り換えを検討するのも一つの手です。
6.返済比率はあくまでも目安である
返済比率についてお伝えしてきましたが、返済比率はあくまでも目安であることに注意しなければなりません。
返済比率は常に変化しており、購入前に算出した数値と、実際に運用を始めてからの返済比率には多少の差が生じます。
また、運用後に金利上昇リスクや空室リスクなど、さまざまな問題が生じることもあるでしょう。
返済比率は絶対的なものではなく、常に一定のリスクがあることを念頭に置いたうえで不動産投資と向き合うことが大切です。
7.まとめ
今回の記事では、不動産投資における返済比率についてお伝えしました。
不動産投資の出口戦略を立てる上でも返済比率は極めて重要な値のひとつです。
とはいえ、お伝えしたように返済比率は絶対的なものではなく、あくまで目安にすぎません。
そのため、運用開始後も定期的に収支を見直し、健全な運営ができているかどうか確認することが大切です。
返済比率を50%以下に抑えることを長期的な目標とし、安全性の高い不動産投資を実践しましょう。