不動産投資のリスクは11個!それぞれのリスク対策を解説

 

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空室リスクや災害リスクなど、不動産投資にはさまざまなリスクがあります。

「リスクの多さがデメリット」と思う人もいるのではないでしょうか。

しかしリスクが顕在化していれば、事前に対策を取りやすくなるものです。

突発的な価格変動が起こりやすい株式投資と比べると、投資前からリスクが明確な点は不動産投資の良さではないでしょうか。

今回は不動産投資の各リスクと対処法を解説します。不動産投資を考えている人はリスク対策の参考にしてください。

1.不動産投資を始める前に知っておきたいリスクの多さ

不動産投資は「人」を対象に「不動産」を貸し出し、定期的な賃貸収入を得る投資です。

人も不動産も現実に存在するものであるため、空室リスクや災害リスクといったリスクはどうしても多くなります。

そのため不動産投資を始める際は複数のリスクに一つずつ対処しなければなりません。リスクの多さやリスク対策の手間をデメリットと捉える人もいるでしょう。

一方で見方を変えると「リスクがわかりきっているから事前にリスク対策しやすい」点は不動産投資のメリットと言えます。

たとえば株式投資や投資信託は、金融市場の動向に影響されて激しい価格変動が起きることがあります。しかし金融市場のリスクは個人投資家でコントロールできるものではありません。

その点、不動産投資ではほとんどのリスクに対処法があります。最初に手間をかけてリスクをある程度つぶしておけば、急激な価格変動をある程度抑えることができます。

2.不動産投資のおもなリスクは11個

ここでは不動産投資のおもなリスクを以下に11個まとめました。

<不動産投資のリスク>
空室リスク 入居者が見つからず空室が発生し、賃貸収入が途絶えるリスク
家賃滞納リスク 入居者が家賃を滞納し、賃貸収入の入金が遅れるリスク
火災リスク 所有物件が火災にあったことで生じる損害リスク
自然災害リスク 所有物件が台風や豪雨などの自然災害にあったことで生じる損害リスク
ローン金利上昇リスク 不動産投資用ローンを利用している場合、ローン金利が上昇し返済額が上がってしまうリスク
事故リスク 所有物件で入居者が死亡してしまうことで生じる原状回復費の負担や空室リスク
損害賠償リスク 所有物件の不具合などで他人から損害賠償請求を求められるリスク
不動産価値下落リスク 購入時よりも不動産の価値が大幅に下落してしまうリスク
修繕リスク 所有物件の老朽化によって生じる修繕リスク
家賃下落リスク 入居率を上げるために家賃を下げて募集するなど、将来的に家賃が下がるリスク
管理会社倒産リスク 所有物件の管理を委託している管理会社が倒産し、家賃を回収できなくなるリスク

いずれも現物資産ゆえに考えられるリスクです。

リスクを完璧に防ぐことはできませんが、まったく対処法がないわけではありません。

それぞれの対処法を次項で詳しく説明していきましょう。

3.各リスクへの対処法

ここでは、先ほどご紹介した11個のリスクに対処する方法を解説していきます。

3-1.空室リスク対策

空室の発生は賃貸収入に直結するため、もっとも気になるリスクと言えます。

入居者が見つからず空室が発生しても、ローン返済費や物件の維持手数料は支払わなければなりません。

万が一空室が長期化すればキャッシュフローが悪化し、家賃を下げたり、最悪の場合は物件を手放したりする可能性が出てきます。

こうした空室リスクへの対策には以下3つの方法があります。

・一定の賃貸需要が見込める立地の物件を購入する

・満室想定でキャッシュフロー計画を立てず、空室がある想定での計画を立てる

・入居付けに強い賃貸管理会社を選ぶ

特に重要なのが「賃貸需要が見込める立地での物件購入」です。

日本は少子高齢化による人口減少社会です。空き家率も年々増えているため、全体での賃貸需要は今後も少なくなるとみられています。

しかし東京23区を含む首都圏や一部の都市では人口が増えている地域もあります。

つまり、全ての地域で需要がなくなるわけではありません。

加えて、その地域の需給バランスも重要です。人口増加地域であっても、供給物件が過多状態であれば空室が発生しやすくなるからです。

人口の状況や各地域の賃貸物件の需給バランスを確認しつつ、適度に空室率を設定したキャッシュフロー計画を立てましょう。

入居付けに強く、地域の事情に精通した賃貸管理会社をパートナーに選ぶことも大切です。

3-2.家賃滞納リスク対策

空室とあわせて、一定数発生する家賃滞納リスクも重要です。

一般的には、どんな物件でもどんな地域でも入居者のうち数%は家賃を滞納すると言われています。

実際、うっかりミスの可能性も含めた賃貸物件の滞納率(月初全体の滞納率※)は全国で約5%です。単なる入金忘れであれば、都度の連絡で対処できるため問題ありません。

厄介なのは「連絡しても入金しない人」「毎回滞納する人」が入居者であるケースでしょう。

この場合、立ち退きを要請するには3か月以上の滞納期間が必要です。当然、その間の家賃収入はゼロにもかかわらず、別途立ち退き要請の手間とコストがかかってしまいます。

こうした滞納リスクに対処する方法として以下の対策があります。

・入居時の審査を厳しくする

・個人信用情報だけではなく、できれば過去の転居歴・職歴も確認する

入居時の審査については、賃貸管理会社に審査を委託しているケースが多いでしょう。その場合は賃貸管理会社に審査基準を厳しくするように依頼し、さらに自身も入居者情報を確認し、面談に立ち会えるようにしましょう。

平気で滞納を繰り返す人は、過去にもなんらかのトラブルを起こしている可能性が考えられます。

「仕事や住居をひんぱんに変えていないか?」「入居申込書の記載にうそはないか?」よく確認することが大切です。

※賃貸物件の滞納率出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第25回 賃貸住宅市場景況感調査」

3-3.火災リスク対策

発生時の損害規模が大きいのが火災リスクです。

所有物件が火災にあえば大規模な修繕が必要ですし、場合によっては数か月家賃が途絶える可能性もあるでしょう。

火災リスクに対処する方法は以下の2つです。

・火災保険を充実させる

・火災時の損害が比較的抑えられる耐火構造の物件を選ぶ

ローン利用者は火災保険の加入が必須ですが、火災保険料を軽減するために補償を小さくすることはおすすめしません。

火災自体は起きる確率こそ低いものの、起きたときの損害額が膨大になるためキャッシュフローが一気に悪化する可能性があります。万が一の事を考えて耐火構造の物件を選び、火災保険を充実させましょう。

3-4.地震・台風など自然災害リスク対策

火災に続いて、地震や台風、豪雨といった自然災害リスクも考えられます。

自然災害リスクには以下の対策で備えるようにしましょう。

・地域のハザードマップを確認し、自然災害リスクが低い地域の物件を購入する

・耐震構造の物件を選ぶ

・地震の補償は火災保険に付帯する地震保険で備える

・台風は火災保険の「風災補償」豪雨は「水災補償」で備える

地震を始め、日本は自然災害が起きやすい国です。自然災害リスクが低い地域で耐震構造の物件を選び、さらに火災保険と地震保険の補償を手厚くして万が一の災害に備えましょう。

3-5.ローン金利上昇リスク対策

不動産投資の魅力はローンを利用して資産形成できることですが、ローンには金利上昇リスクがあります。

ローン返済中に金利が上昇すれば、毎月の返済額が上がります。元々キャッシュフローがぎりぎりであれば、金利上昇によって赤字経営になるかもしれません。

もちろん、2021年11月現在は政府のゼロ金利政策が続いているため、不動産投資用ローンの金利が急激に上昇することは考えにくいです。とはいえ、この先数十年も同じ金利が続く保証はありません。

金利上昇による負担を抑える方法としては以下の対策があります。

・金利上昇があってもキャッシュフローに影響が出ないよう計画を立てる

・(期間限定のものも含め)固定金利を選ぶ

特に大切なのは、金利上昇を見越したキャッシュフロー計画です。

多少返済額が上がっても経営に影響が出ないように計画し、金利上昇幅が大きいときは繰り上げ返済で対処できるよう、手元にある程度資金を残しておきましょう。

また、物件の売却時期をふまえた出口戦略を考え、当初○年固定金利タイプを選択するのも一つの方法です。

ただし、固定金利は変動金利より年0.5%~2%程度高くなるため、その分キャッシュフロー計画が大きく変わってしまう可能性に留意が必要です。

3-6.事故リスク対策

所有物件の入居者が物件内で死亡してしまい、物件が事故物件になってしまう事故リスクがあります。

おもな事故リスクは入居者の自殺や孤独死が挙げられますが、最悪のケースとして殺人事件の舞台になってしまうリスクもゼロではありません。

入居審査の段階で入居者の自殺や孤独死、殺人事件の兆候を予見することは非常に困難です。

対策としては、事故に備えた補償がある火災保険への加入があります。

特に気になるのが孤独死です。

日本は高齢社会であり、今後も一人暮らし高齢者の孤独死は避けられないのではないでしょうか。孤独死に対応した火災保険を選び、部屋の原状回復費をカバーできるよう備えておきましょう。

3-7.損害賠償リスク対策

所有物件の不具合で入居者や他人になんらかの損害を与えてしまえば、損害賠償を求められるリスクがあります。

たとえば建物の設備が老朽化し、排水管が破裂して入居者の部屋が水浸しになるケースです。

この場合、ワンルームマンションのような区分所有物件では、共有部分か専有部分かで責任の所在が分かれます。

一方で一棟物件や戸建てでは賃貸オーナーに損害の責任があるとみなされます。物件を所有するオーナーには、物件を適正な状態に管理する法的な義務があるからです。

したがって、物件の所有には「定期的なメンテナンスと修繕」が必要です。

メンテナンスを怠れば修繕が遅れて損害を与えてしまうリスクも高くなるため、管理会社任せにせず、自らの目で物件の状態を確認しておきましょう。

3-8.不動産価値下落リスク対策

当初の想定より不動産の価値が下落してしまうリスクもあります。

価値の下落は賃貸需要の低下や建物や設備の老朽化、事故などさまざまなリスクによって起こります。

そのため不動産価値下落リスクを抑えるためには、他のリスク対策を徹底することが大切です。

特に空室リスクの際にお伝えした「賃貸需要が見込める立地での物件購入」は重要です。

人口減少社会の中でも人口が増えている首都圏や、需要に対して供給が追いついていない地域で物件を選びましょう。

3-9.修繕リスク対策

現物資産である以上、所有物件が老朽化していくことは避けられません。

そのため厳密にはリスクとは言いがたいのですが、メンテナンスを怠ると高額な修繕費がかかってしまうことがあります。

修繕費が高額になってしまう前に対処して、修繕リスクを極力抑えましょう。

修繕リスクの対策としては以下の二つがあります。

・管理会社とオーナー自らが物件の状態を定期的に確認する

・定期的にかかる修繕費を多めに織り込んで収支の計画を立てる

特に重要なのは定期的な確認です。

目視だけでは老朽化や劣化の具合がわからないこともあるため、入居者に「不具合を感じるところはないか」と確認を入れてもいいでしょう。

3-10.家賃下落リスク対策

一般的に不動産は経年劣化により家賃が下落していくものです。

似たような立地・同じような間取りでも、新築物件と築30年の物件では家賃に差がありますよね。

修繕リスクと同様、家賃下落リスクは「もしかしたら起こるもの」ではなく「時間の経過とともに必ず現れるもの」と考えましょう。

したがって、家賃下落リスクをなくすことはできません。対策としては、下落幅を緩やかにするためにメンテナンスを欠かさないことが挙げられます。

また、最初から「家賃下落が始まる前に購入後10年で売却すると出口を決めておく」方法もあります。

長期的に家賃が下降していくことは避けられないため、出口戦略をしっかり考えておきましょう。

3-11.管理会社倒産リスク対策

賃貸管理を委託している管理会社が倒産してしまうリスクもあります。

管理会社が倒産すれば、場合によっては家賃や敷金を適切に回収できないかもしれません。

賠償請求をしたとしても、破綻している会社に支払能力があるのか疑問です。したがって自分の資金であるにもかかわらず、回収するために一定の手間と費用がかかる可能性があります。

また、新しい管理会社を探して契約を結ぶ手間も発生するでしょう。

管理会社の倒産リスクを抑えるためには、経営面が順調で安定した実績があるかどうかを確認するしかありません。

対策としては「財務状況はどうなっているのか」を率直に聞き、情報をできる限り開示してくれる会社を選ぶことです。大切な賃貸管理を任せる会社ですから、信頼できる管理会社をパートナーに選びましょう。

4.まとめ

不動産投資のリスクの多さは投資をするハードルを上げる大きなデメリットです。

一方でリスクが顕在化していることで、投資する前にある程度リスクコントロールできる点は不動産投資のメリットです。

メリット・デメリットを理解したうえで、うまくリスクコントロールして不動産投資を始めてください。


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