家賃収入にかかる税金の種類と計算方法
この記事の目次
不動産投資の魅力はなんといっても定期的な家賃収入です。
満室かそれに近い稼働状況になれば、不動産オーナーとしてはそれほど手間をかけずに安定した収入を得ることができます。
ただし、不動産投資では必ず経費や税金などを考慮しておくことが必要でしょう。
毎月の家賃収入から経費や税金を差し引いた金額が赤字になると、不動産を保有しているだけ損という状態になってしまいます。
今回は、家賃収入に対してかかる税金にはどのような種類があるか、税金の計算方法などを説明します。
- 家賃収入にかかる税金として所得税・住民税、固定資産税及び都市計画税などがある
- 家賃収入は事業の規模により、不動産所得又は事業所得に分類される
- 所得税・住民税については申告が必要だが、固定資産税及び都市計画税は申告不要
1.家賃収入にかかる税金の種類
不動産を取得して運用している時期に家賃収入に対して課税される税金としてはまず、収入額にしたがって発生する所得税及び住民税があります。
これに加えて、不動産を所有していることに対して課税される固定資産税及び都市計画税もあります。
なお、不動産の購入や売却の際にかかる税金もありますが、この記事で解説するのは家賃収入にかかる税金のみです。
1-1.所得税・住民税
所得税や住民税はサラリーマンの給与所得に対しても課税されるのでご存知の方も多いことでしょう。
家賃収入に対しても、給与への課税と同様に所得額に応じて所得税及び住民税が課税されます。要するに、累進課税なので家賃収入の額によって税額が変動します。
所得税と住民税が課税されるのは、家賃収入の総額ではなく収入から経費等を控除した「所得額」です。
所得税と住民税が課税される所得については、所得税法上、以下のような区分があります。
利子所得 | 預貯金や公社債の利子ならびに合同運用信託、公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得 |
配当所得 | 株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託(公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託以外のもの)および特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得 |
不動産所得 | 土地や建物などの不動産、借地権など不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸付け(地上権または永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む)による所得(事業所得または譲渡所得に該当するものを除く) |
事業所得 |
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得 ※不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は、原則として不動産所得や山林所得 |
給与所得 | 勤務先から受ける給料、賞与などの所得 |
退職所得 | 退職により勤務先から受ける退職手当や、厚生年金基金等の加入員の退職に基因して支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得 |
山林所得 |
山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡したりすることによって生ずる所得 ※山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合には、山林所得ではなく、 事業所得または雑所得 |
譲渡所得 |
土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得、建物などの所有を目的とする地上権などの設定による所得で一定のもの ※事業用の商品などの棚卸資産、山林、減価償却資産のうち一定のものなどを譲渡することによって生ずる所得は、譲渡所得とならない |
一時所得 | 上記利子所得から譲渡所得までのいずれの所得にも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得 |
雑所得 | 上記利子所得から一時所得までの所得のいずれにも該当しない所得 |
出典:国税庁HP No.1300 所得の区分のあらまし を参考に作成
不動産投資における家賃収入は、基本的には「不動産所得」に区分されます。
ただし、不動産投資が事業的規模によって行われている場合には「事業所得」となることがあります。
事業所得となる場合には、一定の条件を満たした場合に最大65万円の青色申告特別控除や、配偶者や親族が事業にもっぱら従事していれば、その家族への給与を経費とすることなどが認められているのです。
つまり、不動産投資であっても規模によっては、事業所得となり節税方法の選択肢が広がるといえるでしょう。
事業所得となる不動産投資かどうかは、原則として「社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうか」によって実質的に判断されます。
ただし、以下の形式基準に該当する場合には、原則として事業所得として取り扱います。
不動産の種類 | |
貸間、アパート等 | 貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること |
独立家屋 | おおむね5棟以上であること |
出典:国税庁HP No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分 を参考に作成
なお、給与所得のあるサラリーマンの場合、給与所得と不動産所得については損益通算が可能です。
したがって、不動産投資が赤字になるとその分、給与所得の所得税及び住民税が減少します。
1-2.固定資産税及び都市計画税
固定資産税及び都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に課税される税金であり「固都税」などと呼ばれることもあります。
このうち都市計画税は、市街化区域の不動産の所有者に課税される税金です。
固定資産税及び都市計画税は国税ではなく地方税なので市町村に納付します。
固定資産税及び都市計画税については、確定申告などは不要です。税額は市町村が決定し、毎年納税通知書が届く仕組みです。
1-3.消費税
ご存知の方も多いと思いますが、居住用の賃貸物件の家賃には消費税が課税されません。
一方、投資対象がオフィスや店舗など事業用物件である場合には、消費税の課税対象です。
なお、課税売上高1,000万円以下であれば、その翌々年まで消費税が免税となる免税事業者の制度があります。
しかし、2023年10月から通称「インボイス制度」が始まると、課税売上高にかかわらず免税事業者のままでいることが困難になると予測されています。
インボイス制度が始まると、事業用物件を保有する不動産投資家が課税売上高1,000万円以下だからといってこれまでどおり免税事業者でいた場合に、借主の事業者は消費税の納税時に仕入税額控除を受けられません。
この結果、課税事業者から物件を借りるより借主にとっては税負担が増えてしまいます。
物件自体に魅力があれば、退去などの影響はないかもしれません。
しかし、同様の事業用物件が近隣に多数あるようなエリアであれば物件の競争力は低下しますので、募集をかけてもこれまでより決まりにくいなどの不利益を受ける可能性があります。
2.所得税の計算方法
次に家賃収入に対する所得税の計算方法を説明します。
家賃収入の多くは不動産所得のため、以下では不動産所得であることを前提とします。
不動産所得に対する所得税は以下の計算式で算定されます。
所得税=不動産所得×税率
課税対象となるのは、上でも説明したとおり、家賃収入(不動産収入)の総額ではなく以下のとおり必要経費等を差し引いた不動産所得です。
不動産所得=不動産収入−必要経費
ここでいう不動産収入とは、厳密には毎月の家賃だけに限られません。
家賃以外には、駐車場代、共益費、礼金、更新料なども不動産収入に加算する必要があります。
また、不動産収入から差し引かれる必要経費には、管理委託料、修繕費、金利(元本は含まない)、広告費、仲介手数料、固定資産税及び都市計画税、不動産取得税などがあります。
所得税などの税金は必要経費には含まれませんが、固定資産税及び都市計画税と不動産取得税は必要経費として差し引くことができるため注意が必要です。
不動産所得に対して掛け合わせる税率は、平成27年分以降は以下の表のとおりです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁HP No.2260 所得税の税率 を参考に作成
3.固定資産税及び都市計画税の計算方法
固定資産税及び都市計画税の計算方法は以下のとおりです。
固定資産税及び都市計画税=固定資産税評価額×標準税率
固定資産税評価額は市町村が決定し、3年毎に見直されます。
標準税率は以下の表のとおりです。
固定資産税 | 1.4% |
都市計画税 | 0.3% |
4.確定申告が必要な税金
所得税及び住民税に関しては、家賃収入について不動産所得又は事業所得として確定申告が必要です。
確定申告は毎年1月から12月末までの収入について、翌年の2月15日頃から3月15日頃までの間に行います。
それまでに売上や経費がわかる帳簿や領収書など帳票を用意して、申告の準備をしておかなければなりません。
5.まとめ
それまで給与所得のみであったサラリーマンの場合、確定申告をしたことのない人もいるかもしれません。
不動産投資を始めると、家賃収入が不動産所得と事業所得のいずれに分類されるかを問わず、確定申告が必要になります。
適切な確定申告をするためには、1年分の収入と支出を正確に把握して、なおかつその収支を証明することのできる請求書や領収書などの帳票を保管しておくことが求められます。
確定申告の時期になってからこれらの準備を始めると申告期限に間に合わず、無申告加算税や延滞税が課されるリスクがあります。
このため、不動産投資を始めたらすぐに、確定申告を見据えて経理の手順を確認しておくようにしましょう。
また、サラリーマンが副業として不動産投資をする場合には、そもそも経理処理をする時間がとれないこともあります。
この場合、早めに税理士などの専門家と顧問契約を結んでおいたほうがよいでしょう。
このように、個人で不動産投資を始めると付随してさまざまな手続きが発生します。
専業の不動産投資家であればあまり問題になりませんが、本業が別にある場合には、家賃収入の割には手間ひまがかかりすぎると感じることもあるでしょう。
このような手間がかかることに不安がある場合には、まずは、不動産投資ファンドなど金融商品に投資することも検討するとよいかもしれません。