移動の脱炭素化を目指すゼロカーボン・ドライブとは?SDGs時代の車選び
この記事の目次
私たちの生活に広く普及している自動車にも、脱炭素の波が打ち寄せてきています。
自動車の脱炭素化を表す取り組みの一つが、自動車走行時の二酸化炭素排出量をゼロにする「ゼロカーボン・ドライブ」です。
政府は電気自動車やプラグインハイブリッドカーといった「電動車」を推進しており、2035年までにこれら電動車の新車販売割合を100%にすることを目指しています。
すでにメルセデス・ベンツやボルボといった有名メーカーも、電動車専業メーカーへの転換を発表しています。
世界的にも、自動車社会は従来のガソリン車から環境に優しい電動車中心の社会へと変わろうとしているのです。
今回はゼロカーボン・ドライブの推進で私たちの車移動はどう変わるのか、これからの車選びに役立つポイントを解説します。
車の買い換えを考えている人は購入判断の参考にしてみてください。
走行時の二酸化炭素排出量ゼロを目指す「ゼロカーボン・ドライブ」
「ゼロカーボン・ドライブ」とは車移動の脱炭素化を目指す取り組みです。
2021年6月、地方から脱炭素化を進める「地域脱炭素ロードマップ」が作成され、重点対策の一つにゼロカーボン・ドライブが盛り込まれました。
具体的な目標は以下のとおりです。
<ゼロカーボン・ドライブのおもな目標>
・新しく導入される自家用車・社用車・公用車・廃棄物収集運搬車・タクシー・短距離用配送車両等の選択肢をできるだけ EV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池自動車)になることを目指す
・2035年までに乗用車の新車販売割合のうち、100%を電動車にすることを目指す
・これらの電動車と再生可能エネルギーを活用して、走行時の二酸化炭素排出量ゼロを目指す
私たちの生活で特に影響するのは「2035年までに新車販売で電動車を100%にする」という目標です。
電動車の定義とあわせて詳しく見ていきましょう。
出典:「国・地方脱炭素実現会議」より「地域脱炭素ロードマップ」(内閣官房ホームページ)
国は2035年までに「新車販売で電動車100%実現」を目指している
2021年6月、政府は地域脱炭素ロードマップを決定し「2035年までに乗用車の新車販売に占める電動車の割合を100%にする」目標を定めました。
<ゼロカーボン・ドライブの具体的な内容>
出典:「国・地方脱炭素実現会議」より「地域脱炭素ロードマップ」(内閣官房ホームページ)
電動車を100%にすることは将来的な目標であり、既存のガソリン車の取り扱いについては明言されていません。
自動車メーカーの販売を規制したり、消費者に購入・所有を強制したりするものではなく、あくまで脱炭素を目指すビジョンの一つです。
実際、国内ではまだまだガソリン自動車が自動車販売台数の多くを占めています。
2019年の国内の自動車販売台数は約519万台で、電動車の販売台数は約147万台。
電動車が占める割合は約30%でした。
しかも、そのほとんどがガソリンと電気を併用するハイブリッドカー(HEV)です。
HEVを電動車から除くと、日本の電動車販売台数は10%にも満たないのです。
政府が「電動車100%」の中にHEVを含めるかどうかはまだわかりませんが、どちらにしてもガソリン車のシェアを実質ゼロにするのは決して簡単な道のりではないでしょう。
とはいえ、主要な政策対応には国や自治体の公用車電動化や、電動車の利用を促進するための充電インフラの整備も含まれています。
すでにゼロカーボン・ドライブ対象の電動車購入に対して一定額の補助金が交付される制度もあり、今後電動車の普及を後押しする政策は続々と出てくるのではないでしょうか。
各自動車メーカーでも電動車の普及に注力することが発表されています。
欧州ではメルセデス・ベンツやボルボが、いずれEV専売メーカーになることを発表しています。
日本ではHondaや日産が将来的に新車販売割合を100%電動車にすると発表しました。
2021年現在では電動車100%の道のりは遠いものの、政府も自動車メーカーも少しずつ動いてきていることは事実です。
電動車(EV、PHEV、FCV)とは
ここでは、そもそも「電動車」とは何かを解説します。
以下の表に政府が目指すゼロカーボン・ドライブで記載されている電動車と、一般的なエコカーの定義をまとめました。
<電動車・エコカー>
種類 | 概要 | 「ゼロカーボン・ドライブ」事業対象車 | 「エコカー減税」「環境性能割」といった既存の各種補助金対象 |
電気自動車(EV) | 電気でモーターを回転させて走る車 | 〇 | 〇 |
プラグインハイブリッドカー(PHEV) | 電気かガソリンで走るハイブリッドカー。従来のハイブリッドカーよりエネルギー効率がよく、電気自動車に近い | 〇 | 〇 |
燃料電池自動車(FCV) | 水素と酸素を反応させて燃料電池で動く車 | 〇 | 〇 |
ハイブリッドカー(HEV) | 電気かガソリンで走るハイブリッドカー | × 地域脱炭素ロードマップ目標の「電動車」にHEVを含めるかどうかは不明 |
△ 一定の燃費基準等を満たす車両であれば対象 |
政府はゼロカーボン・ドライブにおいて以下の2つを目標としています。
・新しく導入される自動車の選択肢が 「EV、PHEV、FCV」になることを目指す
・2035年までに乗用車の新車販売割合のうち、100%を「電動車」にすることを目指す
あくまで推進する自動車はEV、PHEV、FCVの3つですが、新車販売割合において100%を目指すのは「電動車」という書き方をしています。
そのため「100%電動車」の中に「HEV」が含まれるかどうかが定かではありません。
先述したとおり、日本で普及しているエコカーの多くはHEV。
HEVの取り扱いが今後どうなるのかについては注視していかなければなりません。
【2021年】環境性能のいい電動車で得られるメリット・デメリット
電動車には環境性能以外にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
今後の自動車購入を考える際の判断ポイントにもなるため詳しく見ていきましょう。
メリット
電動車を購入・所有するおもなメリットは以下の4つです。
・二酸化炭素排出量を抑えられるため、環境に優しい
・燃費がよく減税措置もあるため、車の維持費を安く抑えられる
・災害時にも蓄電池として活用できる
・走行音や振動が少なく静かで乗りやすい
環境面以外で特筆すべきポイントは、維持費の安さです。
特に100%電気エネルギーで動くEVについては、二酸化炭素を多量に発生させるガソリンは一切使用しません。
そのためガソリン代にかかるコストはゼロです。
長い目で見れば、環境にも家計にも優しいドライブを実現できるのが電動車の魅力と言えます。
デメリット
一方で、電動車には以下のデメリットもあります。
・ガソリン車に比べて販売車種が少ないため、全体的にガソリン自動車より価格が高め
・充電に時間がかかる
・充電場所が限られている
・走行音が静かであるため、歩行者が車の存在に気付きにくい
特に気になるのが購入価格の高さではないでしょうか。
電動車の購入には補助金が出ますが、補助金の対象になるのは新車のみです。
購入価格を抑えやすい軽自動車の販売車種については数台しかありません。
普通自動車のラインナップを見てもメルセデス・ベンツやポルシェ、BMWといった欧州メーカーの高級車が目立ちます。
日本車で購入しやすい手頃な価格帯の車種が少ないことが、電動車購入に対するハードルを高くしています。
この点については今後、販売車種が増えて価格帯が下がる可能性もあるため、今後の販売状況に期待しましょう。
電動車購入時の優遇措置を紹介
現在販売されている電動車の多くは輸入車であり、一部の日本車を除くとガソリン車より購入価格は高めです。
ただ、長期的に見ると電動車は維持費が安く、家計に優しく維持しやすい点は大きなメリット。
日常生活で車移動が必須の人はトータルコストで電動車を考えてみるのもいいでしょう。
ここではトータルコストを抑える電動車の優遇措置を紹介します。
<税制面の優遇措置>
・エコカー減税:環境性能のいい対象車(新車)について、1回限りで自動車重量税が免税・軽減される(2021年5月1日~2023年4月30日)
・グリーン化特例:環境性能のいい対象車(新車)について、新車登録の翌年度分の自動車税・軽自動車税を軽減(2021年4月1日~2023年3月31日)
・環境性能割:2021年12月末までに購入した環境性能のいい対象車(新車)について、環境性能割の税率が軽減される
<購入費用の補助>
・CEV補助金(*令和3年度CEV補助金):対象の電気自動車(新車)購入時、最大40万円の補助金を受け取れる(令和3年度分の新車登録期限は2022年2月18日まで)
※4年間の「再生可能エネルギー100%電力の調達」と「モニター制度への参加」が前提のゼロカーボン・ドライブ事業へ参加すれば、最大80万円の補助金を受けられる
出典:「自動車関係税制について (エコカー減税、グリーン化特例 等)」(国土交通省)
「令和3年度 CEV補助金」 (次世代自動車振興センター)
「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」(環境省)
このように制度が複数あり、要件もそれぞれ異なる点には留意が必要です。
制度が適用される車種と条件を確認し、購入価格と購入後の燃費もふまえたうえでトータルコストを計算しましょう。
まとめ
政府はゼロカーボン・ドライブによって「2035年までに電動車の新車販売割合100%」を目指すことを明言しました。
もちろん現時点の日本は、まだまだガソリン車社会。電動車普及は簡単な道のりではありません。
充電設備の不十分さや選べる車種の少なさ、購入価格帯が高めである点は大きな課題です。
しかし明確な絵姿ができたことにより、政府も各自動車メーカーも少しずつ動き出していることは事実。
今後全国で充電インフラが整い、電動車の販売車種が増えていけば、今よりも電動車を購入しやすい環境ができるのではないでしょうか。
何より、環境にも家計にも優しい点は大きな魅力です。
今後自動車を購入する際は、長期的な視点で電動車も含めて選ぶことをおすすめします。