太陽光発電ファンドの税金は?確定申告について解説
この記事の目次
太陽光発電ファンドに投資すると、出資者はファンドの収益から分配金を受け取ることができます。
この分配金については当然ながら税金がかかります。
実際に、非上場の太陽光発電ファンドに投資をする機会はそれほどないため、どのような税金がかかるのか知りたい方も多いのではないでしょうか。
ここでは、太陽光発電ファンドに投資した場合にかかる税金の種類や確定申告における注意点などについて説明します。
なお、以下の解説は令和2年4月1日時点の法令に基づくものです。税制に関しては頻繁に改正がありますので、必ず最新の情報を参照するようご留意ください。また、個別のケースにおける判断については、税務署又は税理士などの専門家にご確認をお願いします。
- GK-TKスキームの太陽光発電ファンドから受領する分配金は原則として雑所得になる
- 雑所得は給与所得など他の所得と合算されるため配偶者控除等に影響することがある
- GK-TKスキームの太陽光発電ファンドから受領する分配金に消費税はかからない
1.太陽光発電ファンドの分配金にかかる税金
まず、太陽光発電ファンドから出資者が受け取る分配金の所得の種類と、分配金に対する源泉徴収について説明します。
1-1.分配金は原則として雑所得
太陽光発電ファンドは、法的にはGK-TKスキームと呼ばれる投資ファンドとして組成されています。
GK-TKスキームの投資ファンドは太陽光発電ファンドのほか不動産ファンドなどでもよく利用されています。
GK-TKスキームのファンドに投資した場合に出資者が受け取る分配金への課税については、国税庁により、原則として雑所得となることとされています(所基通36・37共-21)。
雑所得は、上場株式への投資などとは異なり累進課税となります。
GK-TKスキームの太陽光発電ファンドの分配金への課税に関しては、以下の記事でも詳細に解説しています。
1-2.分配金の源泉徴収
太陽光発電ファンドから出資者である匿名組合員に利益を分配する場合、出資者が居住者又は内国法人であれば復興所得税を含む20.42%の税率により源泉徴収が行われます。
ここでいう居住者とは、所得税法上の概念です。具体的には、日本国内に住所を有し、又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人です。
また、内国法人は法人税法上の概念であり、日本国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいいます。
2.太陽光発電ファンドへの投資と確定申告
太陽光発電ファンドへの投資により利益を得た出資者は、原則として確定申告が必要となります。
以下では、太陽光発電ファンドへ投資した場合の確定申告の要否や確定申告のポイントについて説明します。
2-1.確定申告が必要となるケース
太陽光発電ファンドへ投資した場合には、原則としてファンドから受け取った分配金について確定申告をする必要があります。
上で説明した通り、GK-TKスキームにより組成された太陽光発電ファンドから受け取った分配金は雑所得として扱われます。
分配金を受け取った出資者が居住者である個人の場合、雑所得は総合課税の対象であるため、給与所得など他の所得と太陽光発電ファンドからの利益の分配を合算して総所得額を計算し、確定申告をすることとなります。
分配金を受け取った出資者が内国法人である場合には、法人税課税の対象となります。
なお、分配金を受領した出資者が個人であるか法人であるかを問わず、分配金から控除された源泉徴収税額は、確定申告における所得税等の額又は法人税の額から控除できます。
2-2.確定申告が不要となるケース
居住者である個人が給与所得を受けている場合、給与所得や退職所得以外の所得の合計額が20万円以下の場合には、確定申告は不要とされています。
ただし、よく誤解されていることですが、確定申告はあくまでも国税に関するものであるため、確定申告が不要であっても住民税の申告は別途必要となることがあります。
住民税の申告が必要であるならば確定申告をすることと手間はほとんど変わりません。
このため、実際には住民税の申告も不要となる場合でない限り、確定申告をすることも多いようです。
また、源泉徴収額が本来納めるべき税額より多かった場合など、確定申告をすることにより還付を受けられることがあります。
したがって、太陽光投資ファンドから受け取る分配金が20万円を超えないからといって一律に確定申告不要といえるわけではなく、出資者の個別の事情に合わせて確定申告をするか否かを判断することが必要です。
3.配偶者控除・配偶者特別控除等への影響
上で説明したとおり、GK-TKスキームにより組成された太陽光発電ファンドの分配金は雑所得として扱われ、給与所得などと合算して課税されることになります。
このため、例えば、配偶者控除の対象となっている主婦(主夫)が他にパートなどでも給与所得を得ている場合、太陽光発電ファンドから受領する分配金の金額によっては配偶者控除や配偶者特別控除に影響を与える可能性があります。
3-1.配偶者控除への影響
配偶者控除とは、納税者に所得税法上の控除対象となる配偶者がいる場合に、納税者が一定の金額の所得控除が受けられる制度です。
配偶者控除を受けるためには、控除対象となる配偶者の1年間の合計所得金額が48万円以下である必要があります。
ただし、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、配偶者の所得金額にかかわらず配偶者控除の対象とはなりません。
例えば、夫が主に家計を支えている家庭で、妻がパートをしていたとしてもその所得金額が年間で48万円以下であれば、夫の収入から一定の金額が配偶者控除として差し引かれることにより課税対象となる所得が減少します。
配偶者控除の金額は納税者本人の合計所得金額により決まります。
具体的には、以下のとおりです。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | 控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
出典:国税庁タックスアンサーNo.1191配偶者控除
課税対象となる所得が減少するとその分、所得税が減額されることになります。
したがって、太陽光発電ファンドから分配金を受領した結果、他方の配偶者が配偶者控除を受けられなくなると、家計全体としては収支がマイナスとなることがあるため注意を要します。
3-2.配偶者特別控除への影響
配偶者控除と似た制度として、配偶者特別控除があります。配偶者特別控除とは、配偶者の年間の合計所得金額が48万円を超えるため配偶者控除の適用が受けられない場合であっても、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。
控除を受けられる金額は配偶者の合計所得金額と納税者本人の合計所得金額によって決まります。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超950万円以下 | 950万円超1,000万円以下 | ||
配偶者の合計所得金額 | 48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
125万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
出典:国税庁タックスアンサーNo.1195配偶者特別控除
配偶者特別控除の対象となるためには、配偶者の1年間の合計所得金額が48万円を超え、かつ133万円以下であることが必要です。
また、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には控除の対象とならないことは、配偶者控除と同様です。
配偶者特別控除に関しても、配偶者控除と同じように太陽光発電ファンドからの分配金の金額によっては控除の対象から外れることがあるため注意が必要です。
3-3.基礎控除
配偶者控除や配偶者特別控除は、太陽光発電ファンドから分配金を受け取った本人ではなく、その配偶者の納税額に影響する制度です。
これに対し、太陽光発電ファンドから分配金を受け取った本人の納税額が減額となる制度として基礎控除があります。
基礎控除は、確定申告などにおいて所得税額の計算をする際に所得金額から一定の金額を差し引くことができるものです。
控除される金額は、令和元年以前は一律38万円でしたが、令和2年以降は本人の合計所得金額に応じて、控除額が0円から48万円まで段階的に上昇する仕組みとなっています。
具体的には、以下のとおりです。
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
出典:国税庁タックスアンサーNo.1199基礎控除
4.扶養控除への影響
配偶者控除のほかに、扶養控除への影響も理解しておく必要があります。
扶養控除とは、納税者に所得税法上の控除対象となる扶養親族がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられる制度です。
ここでいう扶養親族とは、配偶者以外の親族のうち納税者と生計を一にしている者です。
例えば、同居している親は扶養親族の典型例です。子どもの場合は、年齢がその年の12月31日時点で16歳以上である場合に限り扶養親族となり得ます。
扶養控除もまた、配偶者控除や配偶者特別控除と同じく、扶養親族の所得金額によって適用対象となるかが決まります。
基準となる所得金額は、年間48万円以下です。ただし、給与所得のみの場合には給与収入が103万円以下であれば扶養控除の対象となります。
太陽光発電ファンドからの分配金があると「給与所得のみの場合」ではなくなるため扶養控除を受けるための基準が厳しくなります。
したがって、太陽光発電ファンドへの投資をする人が家庭内で扶養控除の対象となっている場合には、家計全体としてみたときに税金分を考慮してマイナスにならないか、あらかじめ確認しておいた方がよいでしょう。
5.消費税との関係
太陽光発電ファンドへの投資に関して、出資者が消費税を支払う必要があるかについて説明します。
5-1.匿名組合員(出資者)が受け取る分配金に対する消費税
GK-TKスキームの太陽光発電ファンドにおいては、出資者である匿名組合員が受け取る分配金に消費税は課税されません。
この根拠として国税庁の通達において、次のように定められています。
匿名組合の事業に属する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、商法第535条《匿名組合契約》に規定する営業者が単独で行ったことになるのであるから留意する。
この通達における「営業者」とは、GK-TKスキームにおけるGK(合同会社)のことであり投資ファンド自身です。
したがって、通達に従えば、GK-TKスキームの太陽光発電ファンドの投資に関しては営業者であるGKが単独で投資対象となる資産の譲渡等を行ったこととなります。
この結果、投資ファンドであるGKによる資産の譲渡等について単独で消費税の課税対象となります。
他方、匿名組合員である出資者が受け取る分配金に対しては消費税が課税されないことになります。
5-2.匿名組合出資持分の譲渡に対する消費税
以上は、出資者が受ける利益のうちインカムゲインに関するものといえます。
これに対し、出資者が保有する有価証券であるところの匿名組合出資持分を譲渡する場合、すなわちキャピタルゲインに関して消費税が課税されるでしょうか。
結論からいうと、匿名組合出資持分を第三者へ譲渡する場合には消費税はかかりません。
根拠となるのは、以下の国税庁の通達です。
法別表第一第2号《有価証券等の譲渡》の規定によりその譲渡が非課税となる有価証券等には、おおむね次のものが該当するのであるから留意する。
…
(2)
…
ロ 合名会社、合資会社又は合同会社の社員の持分、協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人(人格のない社団等、匿名組合及び民法上の組合を含む。)の出資者の持分
この通達の(2)ロには、譲渡が非課税となる有価証券として匿名組合の出資者の持分が挙げられています。
したがって、GK-TKスキームの太陽光発電ファンドの出資者が自己の有する匿名組合出資持分を第三者に譲渡する場合、消費税は非課税となります。
もっとも、投資をする際に締結する匿名組合契約において、匿名組合出資持分を第三者に譲渡することは通常禁止されています。
したがって、GK-TKスキームの太陽光発電ファンドの匿名組合出資持分を譲渡することは実際にはほとんど発生しないといえます。
6.まとめ
GK-TKスキームの太陽光発電ファンドへの出資に関わる税制はあまりポピュラーなものではないため、投資を検討する段階で初めて知る話も多いのではないでしょうか。
とくに重要なのことは、投資ファンドからの分配金が雑所得として扱われることです。
税率が一律となっている上場株式などとは税制が異なりますので注意が必要です。
また、匿名組合を通じて出資をするファンドは同様の税制がとられています。
例をあげるとソーシャルレンディング(貸付型ファンド)や不動産クラウドファンディングなどがこれにあたります。
近年は匿名組合を用いた投資型クラウドファンディングのサービスが増加していますので、投資をする前によく確認をしてから投資をすることを推奨します。